星に願ったり
絵馬に願い事を書くが
そんな事では
母の心配は晴れない

自分事ではない願いを
まいにちまいにち祈る
食べ物が喉を通らぬとは
このことか

2月の空には
子を想う家族の祈りが
飛びかっている

同級生同士
同じ歳ではあるけれど
若く見える人と
見えない人といる

その違いは何なのか
じっくり考えたい
じっくり考えて
若く見られる秘訣を
発見したいという
姑息な考え

跳ねるように
近づいて来れるのは
どこにも痛みが
ないということ

まっすぐな背骨を保てるのは
お腹に筋力があるということ

君の背中の肩甲骨は
いつも左右に動いている

ずいぶん遠くへ来た
知らない山道を
ぐんぐん登っていく

初めて見るが
どこかで見た草
知ってる木
かわらやね

助手席から見えるのは
緑の草に呑み込まれた
崩れた廃屋

どこまでいっても
この国では
緑が強い

誰も知らない秘密は
自分だけは知っている秘密
口を閉じて
うっかり言ってしまわないよう
酔いつぶれて
いつの間にか
知られぬよう
自分の中でぐるぐるまわる
そいつは
いかにも
体に悪そう

夜明け前
鳥も鳴かず
風も吹かず
車も道を通らない

村は降り続いた雪に
すっぽりおおわれている

静かな夜明け
台所から
夜中　流し続けた
細い水音だけが
かすかに聞こえる