自分で書いた手紙が
古い紙袋から出てきた
手紙というのは
夜に書くべきではない
暗闇が私の頭を押さえつけ
こうしたほうがいい　
が
こうすべきだ
これしかない
に　いつの間にかすり替わる

ずっと見かけなかった
いったい誰に
隠されていたのだろう
この手紙は

抱かれている赤ちゃんは
起きている時
あちこち見ている
興味津々だ

エレベーターの中で
女の人の顔を見てにっこり
愛嬌をふりまく
かわいいね

ひとり降りて
ふたり降りて
お母さんがバイバイは？と言うと
赤ちゃんは手をふる

こんにちはが
まだ言えない赤ちゃんは
1番先に
バイバイを覚えるようだ

旅の途中では
想い出を残したくなる
美味しいものを食べて
誰かのおすすめの
美しい風景
可愛らしい土産の品

旅の最後に
残されたアルバム
辛い時
疲れた時もあったが
写真に残るのは
楽しそうな表情の私の顔

電車に乗ったり
野球場に行くと
大勢の人がいる
よくもまあ
これだけ知らない人が
いるものだ

まだ知らない君より
いつまでも知らない君の方が
圧倒的に多い

皆　知らないもの同士だが
それぞれの場所で
役割を果たしているのかな
一つずつレンガを積むように

いつまでも
知らない君であっても
それでもいいかもしれない

今日の空は
透き通った水色だった
風が吹き寒い

そこに浮かぶ雲
光の当たるところは光り
当たらないところは暗い

暗い部分は
墨絵のような
あおい黒

ひとつの雲の中に
日向と日陰があるようで
不思議だった
今日の雲