編み機というものを
母が持っていた
義母も持っていたらしい
ずっと昔のことだ
編み機は
とにかく音がうるさい
戦車が線路を通るような
横移動の往復
母が若いころ
家で家族のセーターを編むのは
普通のことだったが
いつの頃からか
すっかり姿を消した
流行り廃りは世の常だけど
こんなに一気になくなったのは
何故なんだろう
ミシンはまだあるのに
10ヶ月になった子は
離乳食をバリバリ
食べ始める
しばらくすると
頭がくらんくらん
目がとろん
食い気が眠気に乗っ取られて
イスから下に
ずり落ちそう
頭がくらんとして
クッと戻る
電車の中では
若い女性もおじさんも
どこかに頭をぶつけながら
また睡魔のとりことなる
笑いごとじゃない
私も時々そうなる
人が何に情熱をかたむけるのか
それは決まっていない
その人の自由である
仕事に力をつくす人がいる
仕事によってプライドやお金や
いろいろな物を手に入れる
子育てに頑張る人もいる
コツコツ時間をかけ
子供を育てることに
生きがいを感じる
夫婦の片方を生涯愛する人もいる
人は自由だ
でも続けることは難しい
だから
最初が肝心
自分は何に重きをおくのか
じっくり考えて
答えを出そう
5日前から喉が痛い
こういう時は無理をせず
しっかり休むに限る
ここ数年これで乗りきった
しかし今回 熱が出た
病院に行って薬をもらい
これで大丈夫と思ったが
昼も夜も咳がでる
トローチをなめて
うがいもして
それでも良くなる気配がない
どうすればいいの?
昔 母が小さな子の
背中をさすっていた
その子は喘息で
朝がた 息が苦しくなる
母は布団を高く積み
子をそれにもたれさせる
その場面が浮かんだ
喘息がラクになるのなら
私の咳など軽いもの
布団やまくらやその他もろもろ
高く高く積み上げる
今日は
このタワーに体を預けよう
幼いころから
その時々に
大切なものがあった
貝殻のネックレス
大ぶりなクロスのペンダント
刺繍の白いハンカチ
それを可愛らしい袋に
キュッとしまうのだ
宝物のように
姉と私に
親戚のおばさんが
アクセサリーをくれる
母が私達に
浴衣をあつらえてくれる
そういう時
妹の私は可愛いほうを取って
姉は大人っぽいほうを取る
当然のように
今でも
妹気分の抜けない私は
つい可愛いほうに目がいく
習慣とはおそろしい