歳をとって
膝や腰が痛くて動けなくなったら
大きなスクリーンを買いたい
窓くらい大きなテレビでもいい
日がな一日 好きな風景を映すのだ
私はインドネシアの
湿気のある空気が好きなので
熱帯林のストリートビューを
映してもらいたい
冒険に行くことは出来ないが
インドネシアの森を
毎日ながめたい
つきつめて考えないと
自分の理想郷はわからない
私は 木々に包まれて
眠りたい
生まれ育った家は
今でも懐かしく思う
庭にはぐるりと植物が植えてあった
こでまり 柿の木 柚子の木 松
南天 ヤツデ アオイ
そのほか
名前も知らない植木たち
18歳まで その家に住んだが
今でも枯れないでそこにあることに驚く
ひどく間延びしているが
たしかに記憶の木だ
30年前に植えたという栗の木
枝を広げて空を覆うほど
秋には小粒のイガを落とす
朝早く起きないと
イノシシがやって来るそうだ
子供の頃は自信がなかったので
よく もう一つの物語を考えた
兄弟が多くて服はお下がり
家も昔ながらの瓦屋根で
台風になれば雨もり
そこでお金持ちのひとりっ子ならと
考えるのである
近所に住む年上の女の子の話を
同級生はよく知っていた
あの おねえさんはひとりっ子
お部屋は2階のふた部屋
ベッドルームと勉強部屋
同級生はいいなと言った
あのお家なら
台風がきても大丈夫そうだ
すてきなレースのカーテン
2階に出っ張ったひとりっ子の部屋
この家のあととり娘
だんだん私には
閉じ込められたお姫様のように
見えてきた
ずっとここにいなければならないなんて
窮屈だなと思った
家以外の場所で眠る時は
怖い怪談話は
御法度である
ホテルの部屋などは
恐ろしい由来しか
想像できない
テレビの特番は消して
真に迫った投稿は
明日の朝に回し
暗がりの中に
動く影を感じると
照明を全てつける
一度 考えつくと
妄想はふくらむらしい
フレーバーティーが気に入って
イベントに行ったり
福袋でたっぷり買ったり
この5年間飲み続けた
すると この3ヶ月
飲むと調子が悪い
毎日飲むことは叶わず
たまに飲むことにした
昔の人はよく言ったものだ
過ぎたるは及ばざるが如し
全くそれを地でいっていた
買い続けて たっぷり余った
この紅茶のティーパックを
どうしよう
幸い賞味期限は長いので
まわりの人たちに
少しずつ配ろう
過ぎたるは〜なので
ほんの少しずつ