優しい嘘なんかない。
嘘自体にいい嘘も悪い嘘も優しい嘘もひどい嘘もない。
嘘は全部悪だ。
優しい嘘はときにその人との関係性を傷つける。
私と昔の親友がそうであったように。
瞳をとじて私の今までを振り返ってみた。
小学生の頃は足も早くてテストも毎回100点だった。
中学校や高校に上がってもテストは毎回5教科で480点以上はとれるくらいには頭がよかった。
大学では経済学について学んだ。
大学を卒業したあとには大手企業に就職した。
すべてが完璧で順調に進んでいた。
だが、ついさっき私の完璧な生活が終わりを
迎えようとし始めた。
私は会社から帰る途中に通り魔に刺された。
胸と腹の2ヵ所を結構深く刺されてしまった。
そのせいで私の人生は終わりへと向かい始めた。
この辺は人通りが少ない。それに加えて今日は雨だ。
最悪な環境が整っている。
もう私の最期は近いだろう。
まだやりたいことがたくさんあった。
とくにやりたかったことは愛してるあの人との
子供を産むこと。
最近3ヶ月も生理が来なかったからたぶん
妊娠してたのだろうがお腹を刺されてしまったし
私ももうじき死ぬからこの子は産んであげられないだろう。
それが一番の心残りだ。
あなたへの贈り物は何がいいだろう。
お金?ブランド品?私のすべて?
何がいいんだろう。
私はあなたになら何でも捧げられる。
私を愛してくれるのはあなたしかいないのだから。
私に話しかけてくれるのもあなたしかいないのだから。
羅針盤は向きをいくら変えても同じ方向に針が向く。
まるで道を示すみたいに。
その道をたどっていけば未来は
安定しているのかもしれない。
でも僕は決められた道ではない道を行きたい。
たった一度の自分だけの人生を
何かに決められたくなんかない。
例え失敗してもいいから僕は僕の信じる道に進む。
明日に向かって歩く、でも
明日があるかはわからない。
今から持病が悪化して死ぬかもしれないし交通事故に
会うかもしれない。
それでも明日に向かって歩く。
好きな人のために。