最近私はふと思う。
私はなんで生きてるんだろう。
学校と家を行き来する毎日。好きなこともないし好きな人もいない。楽しいことも全然ない。
なのに嫌なことはたくさんある。
朝起きること。布団から出ること。家の外に出ること。学校に行くこと。授業を受けること。友達に話を合わせること。親の機嫌を取ること。自分の気持ちを隠すこと。ブスな顔で生きること。スタイルがよくならないこと。声がキモいこと。滑舌が悪いこと。
挙げだしたらキリがない。
人生って残酷。私だけハードモードで生きてるのかな?
そうじゃなきゃ私の人生の説明がつかないよ。
もうこんな人生投げ出したい。
そんな勇気なんか持ち合わせてないけど笑。
そんなことを考えてるうちに駅のアナウンスが流れ始める。
私の意思には関係なく時間は進み続けている。
また1日が始まるんだ。もう生きたくないのに。
動物の動画でも見て気持ちを切り替えようとポケットからスマホを取り出す。その時一緒に一枚の写真がポケットから落ちる。
それは私だけの宝物。私の命よりも大事なもの。
推しのサイン入りのチェキだ。
私の推しはもうこの世にいない。誹謗中傷に耐えれずに去年の11月5日に自殺してしまった。
気づいたときには私は走り出していた。
目の前の一枚のチェキだけのために。
周りの目も気にせずただひたすらにチェキだけのために走った。そして何とか掴むことが出来た。それと同時に私の身体は宙に浮いていた。
視界の端には電車が映り込んでいる。
電車が私に接触するまでにはあと数秒の猶予はあるだろう。
地面についてすぐに動けば電車に轢かれなくて済むはずだ。
なのに私の身体は地面に叩き付けられても動こうとはしなかった。
私は今、推しに呼ばれている気分だった。
だってこんな偶然あるだろうか?
推しが自殺した翌年の同じ日に推しのサイン入りのチェキのせいで死にそうになっているのだ。
それにこのままだらだらと生きていたっていいことはないだろう。
私の目の前に現れた一筋の光。
私はその光を信じるようにそっと目を閉じる。
正直死ぬのは怖い。
でもそれ以上に私は目の前の一筋の光に縋りたかった。
―最近ふと昔の事を思い出す。
「ママただいまぁ!」
「おかえり。あ、俊介あんたまた靴脱ぎっぱなしじゃない!靴は脱いだら揃えなさいっていつも言ってるでしょ。靴脱ぎっぱなしにしたから夜ご飯作るの手伝ってもらうわよ!」
「えーめんどくさーい!」
「こら待ちなさい!」
「俊介!靴下は脱いだらちゃんと洗濯機に入れなさい!わかった?」
「めんどくさいからやだー!」
「俊介おもちゃは出したらしまいなさい!わかった?」
「ママがしまってくれるからいいもーん!」
昔はまだまだ子供で気づかなかったけど俺、母さんにめちゃくちゃ迷惑かけてたな。母さんが死んでから自炊とか洗濯とかの大変さを知ったよ。母さんはこんなに大変な家事をしながら俺の面倒を見てたんだな。昔の俺は何でもめんどくさいって言ってすぐ逃げてたから普通の子供よりめんどくさかっただろうなぁ。今更母さんのありがたみを実感してるよ笑。
母さんが死んだ今では玄関には俺の靴が脱ぎ捨てられてるし、部屋のどっかには脱ぎ捨てた靴下もある。さらに部屋中にはカップ麺とかスーパーの惣菜のごみが散乱してる。母さんがいたら靴を揃えてくれて、靴下はちゃんと洗濯機に入れてくれて、ごみは捨ててくれてるんだろうな。
母さんが恋しいよ。
叱られてもいいからもう一回会いたいなぁ笑。
鏡にはいつも私の醜い顔面が映っている。鏡の中に映る私はとても醜くて嫌いだ。気持ち悪い。見つめてるだけで反吐が出る。もっと可愛くなろうと決意して垢抜けを頑張るが鏡の中の私はいつ見ても何も変わらない。
当たり前だ。続かないんだもん。
垢抜けを1ヶ月間頑張れば私でも多少は可愛くなれるのだろうか。そんなことを考えるが1ヶ月後に可愛くなっている自分が想像できなくてすぐ諦めてしまう。
醜い顔面を持つ私がいくら頑張ったところで生まれ持った美貌には敵わない。でも垢抜けを頑張れば多少は生まれ持った美貌を持つ人に近づけるはずだ。
なのに私は垢抜けの努力をしない。
みんなは自分の醜い顔面が1番嫌い?
私は生まれ持った美貌には勝てないって決めつけて垢抜けを頑張れずにいつまでも醜い顔面を晒し続けている自分の事が1番嫌いだよ。