風鈴の音は好きだよ。物のない豊かさを思い出させてくれるから。
でもごめんなさい。うちはほら、ごみ屋敷だから。
そんな家にルンバがあっても無駄なのと一緒。
片づけてって言ってムッとする大人って幼稚園児よりタチが悪いと思わない?
題『風鈴の音』
深夜4時。一番星と満月が見えた。
穏やかな外気が、手を繋いで導いてくれた。
「この先に秘密の場所があるんだ」
私の心は、夜の闇の中に逃避行した。
題『心だけ、逃避行』
経年劣化した鉄製のフェンスの修理依頼をしないと。家畜がモンスターに襲われないように。それと崩壊した煉瓦にクォーツを混ぜて舗装用資材に加工して商業街道に持っていきます。少しは生活の足しになるでしょう。
松明の油が少なくなってきたので可燃性の布と紐用の健と合わせて確保しないといけません。本格的な冬になってからでは素材調達もままなりません。早めの準備が大切です。買い物として頼まれた干し肉とグラッパは馴染みの店で揃えます。私は10歳なのでアルコールを売ってくれる店は限られます。まだ冒険者として戦うことはできませんけど、やれる事はいっぱいあります。冒険者ギルドに依頼を出しに行くと、受付のお姉さんが飴をくれるので今から楽しみです。
題『冒険』
10年後の私へ。
この手紙を読んでいるのは私でしょうか。それとも家族?いずれにせよご存命であれば幸いです。今のあなたの現状を鑑みるに生きているだけでも奇跡的でしょうから。何か一つでも幸福や心の拠り所があることを期待します。それともう一つ。この10年で実った努力があれば教えてください。10年後の私が喜ぶでしょう
題『届いて……』
フォルダ→大切なもの→あの日の景色(選択)
完全に消去しますか?
はい
あなたが私を大切にするのは行儀のよい猫でいる時だけ。あの日の景色は、あの日の景色なのです。
題『あの日の景色』