理想。
と言えば、僕ならば。
強く在りたいし、弱くも在れれば。
なんてよく考えるよ。
何せ、どちらが良いのかなんて僕には
測ることは出来ないのだろうから。
君はどう思う?
強きを取るか、弱きを取るか。
【 理想のあなた 】
この題名の面白いところは、
理想の「あなた」の部分を自分と置き換えるか、
相手と置き換えるかで幾分か違うと言う点なのだろう。
恋なんて難しい僕に、愛が分かるはずも無く。
けれど、声に、文に表してみる。
貴方の元へ届く様に、形がいつか出来る様に。
僕達は、形の無いそれらを恋心やら、愛情やらと大層美しい物なのだと美化して言い表しては、醜くも惑わされ、今日も一人舞う。そう、それも貴方の「手のひら」という劇場にて。
君はどんな物語を魅せてくれるの?
私はこんな、物語を貴方に。
アン・ドゥ・トロワ。
一つの人形がワルツを踊る。
複雑な踊りを、一つ、一つと迷いの無いステップで見事に踊って魅せる。けれど、何故か何かが分からず、見ていても物語の内容なんて、人形の僕には上手く理解が出来なくて。
とりあえず、心にしまっておこう。なんて考えて、
今の物語の名はなんと言うの?
と、問うてみた。
彼女は一瞬こちらを見て、口角を少し上げたと思えば、
【 恋物語 】って言うの。
と、簡潔に答えた。
物語の名を聴いた僕は、妙に納得してしまった。
だって、恋を理解しようだなんて、僕には到底不可能な事だと思うから。
…そんな僕は、目の前の人形に魅せられてしまったみたい。
今宵は貴方と共に、踊りましょう。
これからの物語、僕がリードしたいから。
手を差し伸べてみると、貴方はふふふ、と笑みを零した。
空は晴れているのに、雨音が聴こえる。
いつも笑ってばかりいる貴方の様ですね。
、
空青く 彼方遠くに 雲持ちつ
されども時雨 音のみ聴こゆ
夜は拙者を包まんと寄り添えども、
何も語りはして呉れぬので御座るよ。
、
我儘に 羽織り見上げる 夜の月は
青く白くと 言承けも得ず
とな。
愛を降らせ過ぎては行けません。
あの美しい桜の様に
早く散って仕舞いますから。