きみには
今 、 ほんの少しだけ
【待ってて】。
【ウルフムーン】
昨日は今年初めの満月だった。雨で見ることが出来なくて残念に思った。
貴方は今日、自分のベランダから見える月の写真を送ってくれた。
その写真と一緒に
「今日の月はウルフムーンって言うんだって〜!」
「せっかくなら同じものを見たいし〜」と。
要はこの美しい満月を私と共有したかったらしい。
そう聞いて私は思わず美しいと思った。たった1枚の美しい満月の写真に込められたその純粋な心が。
満月は今日じゃないけれど、貴方が満月を見たのだというのなら、私も貴方と同じ満月を見よう。
私はふと、写真ではなく空に浮かぶ本当の月を見たくてカーテンを開けた。
それは貴方と同じ月を見る為に。
ベランダの手すりに反射した月が揺れる。
いっそ、貴方の心も揺れてしまえばいいのに。
【クリスマスの過ごし方】×【蛙化現象】
私が蛙化現象を持っていると知りながら告白する貴方。
貴方は一体どれほどの勇気を持って告げてくれたのか、私が考え、語れる立場では無いのでしょう。
暖かな窓の外を眺めれば、
聖夜の白雪として舞い落ちることの出来なかった微雨が
凍て空から虚しくアスファルトの上に打ちのめされている。
…けれども、私は考えてしまう。
私が貴方の立場なら告白をすることが出来たのだろうか。
自分の好意を伝えれば、結ばれる訳もなく振られて嫌われるのだと分かっているのに。
「本当にごめんね。
私の蛙化現象が治らない限りは貴方の気持ちを
〝好意〟として素直に受け止める事は出来ないの。」
なんて、ここで言うのは狡いよね。
「
拝啓、君へ。
種を植えたのなら、
美しい太陽を見せてくれますか。
」
𓂃 𓈒𓏸✎
【聖杯】
少しずつ、満たされていく__。
ポチャン。ポチャン。ポチャン。
少しずつ、満たされていく__。
1滴。1滴。1滴。
少しずつ、満たされていく__。
1滴。
それは、私達の気づかない間に
少しずつ、満たされていく__。
1滴。
それは、私達が気にも止めなかった時間で
少しずつ、少しずつ満たされていく__。
1滴。
それは、私達が少しずつ重ねた歳月と共に
少しずつ、少しずつ満たされていく__。
1滴。
見えぬ所に落とし穴があるとも知らず
少しずつ、少しずつ満たされていく__。
1滴。
零れ始めていることに気づけず
少しずつ、少しずつ満たされていく__。
1滴。
もう満たす容器すら、持たぬというのに
「。」
【終わらせないで】
今は…今はできない。
だから待って、
このまま終わらせないで。
そう言うと、
陶磁器のような肌の白さと対象的な
艶々とした腰まで伸びる美しい黒髪を
夏風に靡かせている少女は1粒の涙を零しつつ
(?)