『気ままに旅人』
のんびり気ままに歩いていたら
目の前にある道、ふたつ。
どちらに行こうか考えて、
心のままに道と道の間を
真っ直ぐ歩いてみる。
草をかき分けちょっと傷だらけ
だけどそれでいい。
ちらり横みて左
きれいな石畳のくねくね道
ちらり横みて右
荒れ果てたまっすぐ道
そして戻って前は草の壁
少しかき分け歩いて、またかき分ける
大変な道だけど、ほら。
きれいな花を見つけたよ。
気のゆくままに歩いて行けば
どんな道でも、道でなくとも
不思議といいことはあるもので。
だから僕は気ままに旅人。
『わたしをみつめて』
誰かは言った。
見つめられると
怖くなる。
誰かは言った。
見つめられると
嘘がつけなくなる。
誰かは言った。
見つめられると
ちゃんとしなきゃと思う。
誰かは言った。
見つめられると
嬉しくなる。
あなたの見つめる先には
どんな人がいるんだろう。
そう思いながら
わたしはあなたを見つめる
『朝露』
さらさらと
少し冷たい風に押されて
細く長い尾を風に靡かせる
ススキの群れ
ゆらゆらと
揺れるくすんだ金色は
いつまでも変わらない
秋の景色
ぽろぽろと
項垂れた姿に伝う雫が
小さく朝焼けの渦をうつしては
静かに、落ちた。
『ぱ』
ぱ
っと浮かんだ記憶
青や赤の感情は生まれては黒に飲み込まれる
ガチガチと歯が鳴る
呼吸が浅くなる
震えは大きくなるばかりで
物音が、温度が、声が、感覚が、恐怖が、全てが。
あの日に戻っていく
ぱ
っと 魔法で脳裏に焼き付いた記憶が
消えてしまえばいいのに
あの日のことは存在していないことにしたいのに
だけどそんな上手くいくことは無くて
そして、
ぱ
っと、
ぱ
っと、、
ぱ
っと、、。
『あなたのいない夜』
秋の夜に
衣擦れの音がした
薄絹一枚纏っただけの体が
小さく丸まっていた
頬を伝う涙が
細くなった腕に落ちた
白のレースのカーテンが
肩に触れた
青白い月の光が
私の背中を照らした
暗い部屋に独り
私がいた