幸せに
大事な大事な幼なじみと、
大事な大事な親友が結婚した。
出会いから10年。
素直になれなかったり、口喧嘩もしたり、
遠距離になったり、会えない日々が続いたり。
色々とあって、涙を一緒に流して慰めあった夜もあったけど、
こうして白いタキシードとウェディングドレスに身を包んだ2人の姿を見ていたら、本当にこの2人と出会えて良かったと思ったんだよ。
幸せにね。
そしてこれからも2人の家にお邪魔するよ。
大切な幼なじみと親友だからね。
何気ないふり
彼女はモテる。
まぁ、モテないわけはないだろうと思った。
世間一般でいう『かわいい』という部類に入ると思うからだ。
だから彼女の周りに、男がいても何とも思わない
……はずだった。
親友と呼べる男が、彼女と並んで歩いていた時は。
あまり見ない組み合わせだと率直に思った。
でも彼女は何だか楽しそうな顔をして、僕の親友と向かい合っていた。
次の日、それとなく聞いた。
「昨日、街で見かけたんだけど…」
親友が言うには彼女の方から話しかけられたから、相談に乗っていただけだと言われた。
「そう、なんだ」
何気ないふりで言ったつもりが、少しばかり声がうわずったように聴こえた。
相談?
どんなことだろう?
でも、それは彼女のプライバシーに関わることだし、僕が聞く質問でもないし、僕の親友も答えることはしないだろう。
そもそも何故こんなにも、モヤモヤしているんだろうか。
「…なんか、気になるのか?」
と親友から聞かれ、
「別に」
と答えて、何事もないように振る舞った。
見つめられると
見つめられると、どうしていいか分からなくなる。
僕はこの子から好かれているんだろうか。
…なんて、自信過剰もいいところだ。
人づてに聞いた話では、僕のことが好き…らしい。
『らしい』というのは彼女から、その言葉を直接聞いたわけじゃないからだ。
周りの勝手な憶測もあるんだろうが、それでも彼女からの視線を感じるたびに、僕の背中は少しばかり緊張する。
いっそ見つめ返せば、何か変わるのだろうか。
そんな考えがよぎったが、行動に移す勇気はない。
今日も彼女と目が合う。
彼女の瞳に僕はどう映っているのだろうか。
ないものねだり
ない物を欲しがること。
実現できないことを無理に望むこと。
そっと辞書を閉じた。
改めて意味なんか調べるんじゃなかった。
無理に望んじゃいけないことなのかしら?
あの人の心をこちらに向かせることは。
私の我儘なのだろうか。
ところにより雨
最悪だ……
と思わず呟きそうになった。
今日の目標はネガティブな言葉を口にしないだった。
喉元から出た言葉を、ゴクリと呑み込む。
なるべく平静を装うようにしてるけれど、内心は気が気じゃない。
別に恋人同士ではない、ただの幼馴染みだと言っていた。
雨なんか降るから、オレが補修を受けていたから、一緒の傘にいる2人を見てしまうはめになるんだ。
今朝のニュースを思い出す。
『…ところにより雨でしょう』
その『ところにより』に当てはまってしまったわけで。
自分の傘すら忘れて無いのだから、本当にもう
「最悪だ」