いつもそうだ。
小学校、中学校、高校、大学、入学式は雨。
初めて出来た彼氏とのデートも雨。
初めてバイトに行った日も雨。
親友と喧嘩した日も雨。
自分が雨女なのか。それとも偶然か。
はたまた、私のその先の未来を見せてくれているのか。
良い思い出なんて一切無い。
馴染めなかった。いじめられた。浮気された。裏切られた。
だからいつも雨が嫌い。
また嫌なことが起きるんだ。
そう思って雨のせいにする。
なんだか空が怪しい。雨が降りそうだな。
傘買いにコンビニ寄るべきかな。
君に風邪は引いて欲しくない。
「なんで、泣いてるの?どうした?」
君の暖かい手が頬に触れる。
色々思い出したせいかな。泪が出ていたみたい。
「何でもないよ。ちょっと昔の事思い出しただけ」
綺麗に笑顔を作りながら、
君を心配させないように声をかける。
願わくは、彼と過ごす日にこれ以上雨が降りませんように。
#始まりはいつも
普段とはあまりにも違った。
いつもはわたあめみたいに、ふわふわで甘い顔を見せる。
流行りのわたあめじゃなくて、昔ながらのやつ。
純真無垢な、真っ白の笑顔を君は見せる。
それが違う。
横から盗み見るように見た君の顔は違った。
まるで相手を刺すような眼で向こうを見る。
私だけだと思ってた。
貴方はいつもふわふわしてて、
何処かに飛んで行きそうだったから。
貴方の初めて見る顔が嬉しくて嬉しくて、
ほんとに嬉しくて。
君の手をぎゅっと握った。
#鋭い眼差し
私はこの時間が好き
ゆらゆらと揺れるカーテン
遠くから聴こえる運動部の声、吹奏楽部の音
弾むような足音
疲れた足音
色々な人の笑い声
昼間は見えない色々な音や匂いがする
だから、私はこの時間が好き
誰もいなくなった教室の端で息を吐く
大きく吸って、吐いて
まるで、長い間潜水していたかのように
外の色がオレンジ色に変わるまで
かけがえのない時間を刻む
#放課後
夕方、電車のホーム。
1時間に1本程しか来ない田舎。
次の電車が車であと30分。ホームに人はいない。
仕事をしてる時は、1秒でも早く現実から逃げるため。
けど、私にはあの空気が吸えなくなってきている。
午後、耐えきれなくなって会社を早退した。
まるで、大きな獣から逃げるように。
夕日が沈むのをじっと見つめる。久しぶりだ。
ずっと太陽が何時昇って、何時沈むのかなんて
わからない生活をしていた。
こんなに綺麗だなんて思わなかった。
たそがれているうちに反対のホームに電車が来た。
学校帰りの高校生。
あの時は学校と勉強が命だった。
大人になったら世界は大きくなると思ってた。
結局、そうなんだ。
自分から動き出さないと何も変わらないんだ。
世界は我々に無関心なのだ。
もう、星の明かりが見える。
さあ、帰ろう。
明日は世界を、自分を変えてやると決意して。
#たそがれ
いつもの帰り道。
よく見る二人組が今日もいる。
全力で青春エンジョイしてます!みたいな二人。
いつも、別れ際に拳を合わせてる。
少し先にいる二人とは真逆の私。
それが憎たらしいのか羨ましいのかわからない。
いつもの帰り道。
今日は二人じゃないのか。
なんだか寂しそう。
一人で手を開いて閉じて。
二つ離れた電車のドアの前に立つ私。
何故こんなにも二人組の事を観察しているのかわからない。
季節が二つ変わっても彼は一人だった。
三つ目の季節に入った頃の全校集会。
一人の生徒がいなくなったと知らされた。
彼らがいつも別れ際にやる拳を合わせる動作。
まるで、何かに勝ったようなあの動作。
気がついたら、私も親指を中に入れ強く握っていた。
名前も知らない彼に挨拶をするように。
#別れ際に