1年後はどうなっているだろう
隣でうたた寝している彼女を見て思う
中学の時に仲良くなってもう10年近く経つ
僕達の関係は「親友」とでも呼ぶのだろうか
少なくとも彼女はそう思っているだろう
月に数回こうしてどちらかの家で映画を見る仲だ
彼女は大抵映画の途中で寝てしまうが
今日も彼女の寝顔を見て
癒されると共に胸がたまらなく苦しくなる
彼女とどうこうなりたいわけではない
もちろん彼女の事はすごくすごく好きだが
それ以上に彼女の事を大切に思っている
ずっと彼女の傍にいられるのなら
一生このままでいいと、僕は思う
『子供の頃は、』
暗い過去を笑って話す大人が嫌いだ。
成功した人の昔の不幸話とか大嫌いだ。
失敗を経験した者は強くなる、とか
傷ついた事がある人は愛情深い、とか
親がアルコール依存症だったとか、
虐められて不登校だったとか、
片親で贅沢できなかったとか、
兄弟の中で1人愛されなかったとか、
ヤングケアラーだったとか。
「今思えばそれも経験でした(笑)」 とか。
お願いだから、やめてくれ。
過去に縛られたまま前に進めないで、
ずっと底でギリギリで生きてる人間の傷をえぐるな。
頑張んないといけないことなんて分かってる。
「頑張りたいって自分でも思ってる。」とか言うくせに
本当は過去を盾にして殻に閉じこもっていたい
弱い自分にとっくに気づいてるよ。
それでも頑張れない。殻から出たくない。
陽を浴びたくない。ずっと病気でいたい。
心配されたい。仕方ないねって言われたい。
自分より辛い過去があるのに頑張ってるやつ見ると
もう本当にだめなんだ。
踏ん張りが効かない、足に力が入らない。
これ以上輝くのはやめてくれ。
ある日落ちたんだここまで。
深く深く落ちたんだ。
胸が苦しい、それに光が見えない。
抜け出したいのに抜け出せない。
そういえば落ちる直前、
今まで見た他の誰より綺麗な
天使のような人を見た気がする。
落下
『 好き嫌い 』
「すき、きらい、すき、きらい、すき、きらい、すき、
きらい、すき、すき、すき、すき、すき、っと。」
またこいつ変なことしとる。花占い懐かしいし。
てかめっちゃずるしとる。
「お前、ずるにも程があるやろ。」
「なんのこと?」
しらこいな、とぼけるつもりや。
「そんなん好きにしかならんやん、虚しくないん?」
「えー?だって好きでしょ?」
「何がや。」
「私のこと、好きでしょ?」
こいつ何変なこと言うてるん。びっくりしたわ。
誰がお前なんかのこと好きかいな。お前なんか別に、
「好きや。」
「ふふ、知ってる。」
「夜景綺麗だね。」 なんて言う君に、
「うん、本当に綺麗だ。」って。
別に夜景とか見てないし、
君の横顔しか目に入らなかったのにさ。
街の夜景を見下ろす君がやけに綺麗に見えた
もうずっと前の夏の日。