『半袖』
なんで半袖ってこんなに魅力的なんだろう。
いや違うな。半袖というか、
「 半袖から見える君の腕 」
が魅力的なんだ。
病的に白いわけでも健康的な褐色ってわけでもなくて
至って普通の細くも太くもない何の変哲もない君の腕に
どうしてこんなに惹かれるのか。
なんというか君の夏服って他のと違うんだ。
きらきら光って見えるんだ。
夏の眩い陽射しで照らされてるからかな。
きっと、今年の夏も半袖の君に恋をする。
天国と地獄
貴方が居る そこは天国
貴方が居ない そこは地獄
貴方が居る 地獄でも天国
貴方が居ない 天国でも地獄
こんな歌があったような
「ふふふーふふんふふんふんふんー。」
さっきからなんなんだこいつめちゃめちゃ鼻歌歌ってんだけど、いい事でもあったんかな。
「お前、なんかいい事でもあった?」
「んー?いや別にーー。」
そう答えるとまたふんふん言い出した。
なんだこいつ、俺はそれどころじゃないってのに。
今日俺がこいつを呼んだのはあることを伝えるためだ。
親の転勤で来週には引っ越さなきゃいけなくなったことこいつにはちゃんと言わないとな。
一昨日親から聞いて未だ納得はできていないが、世の中仕方がないことだってある。
やっとこいつに伝える勇気が出て、呼び出した次第だ。
それなのにこいつときたら、さっきから鼻歌ばっか歌いやがって、俺とお前の温度差どんだけだよ。
サーモグラフィーで測ったら俺だけ真っ青だよばか。
そろそろ暗くなってきたな。月も出てきたし。
うわ、今日の月めっちゃ綺麗だな。
そんなことを思ってると
「月めちゃめちゃ綺麗じゃね?」
「え、あ、そうだな、俺も思ってたとこ。」
どうやら、同じことを考えてたらしい。
口に出して言っとけばよかったな。
こういう事がよくある。
俺は元々喋りが得意なタイプでは無い。むしろ嫌いだ。
そんな俺と陽気なこいつが親友になるなんて出会った頃は思いもしなかった。こいつと仲良くなってから俺の口数も増えていって交友関係も広まっていき、まぁ人並みに楽しい学校生活を過ごせてこいつには感謝している。
いやいや、今は昔話にふけってる場合じゃない。
早く言わないと、こいつ明日早いってさっき言ってたし
「あのさ、
あの、俺引っ越すことになった。なんか父さんが転勤でさ、その俺も嫌なんだけど仕方ないっつうか、なんつうか、めっちゃ田舎のとこ行くんだけどさ。なんて言ったかな、鹿児島の端っこの島なんだけどさ、その、」
そこからは一気に捲し立てた。
こんなつもりじゃなかったのになんか涙出てくるし最後の方ちっちゃくなってほぼ言えてないし最悪だ。
なんか頭くしゃくしゃにされてるし、こいつも泣いてるし、いやなんでくしゃくしゃするんだよ。俺のサラサラヘアーが台無しだよまったくもう。
結局それからは2人で泣きながら公園で話してさ、
お前明日早いって言ってたじゃんよ、もう予定から何時間すぎたんだよ。お前って奴はほんとによ
それからしばらく経って一通り落ち着いてから
2人で帰り道を歩いた。
こいつ今日は送ってくれるらしい。彼氏かよ。
また鼻歌歌ってるし、え?ちゃんと悲しんでるよね?
悲しんでくれてるよね?俺めっちゃブルーだよ?
もういいや、なんか笑えてきた。
そういえばこいつはいつもそうだな。
なぁ、お前今何考えてんの?
こいつと出会ってから何百回目か分からない、頭に浮かんだ言葉を今日も胸の中にしまう。
そろそろ俺の家が見えてくる頃だ。
「それじゃあな。」
「おう、送ってくれてありがとな。」
「親友のためだしな。あと、見送り行くからな。」
「ばか授業中だぞ、学校行けよ。」
「そんなん抜けてくるわ、絶対いくべ。」
「そうかよ。好きにしろ。」
「おう、じゃあおやすみ。」
「おやすみ。気をつけて帰れよ。」
ずっとなんてないんだ。
あいつが手を振りその背中もだいぶ小さくなったあと
そう1人で呟いた。
いやーやっぱり俺はだめだな。
結局1番大事なことあいつに言えなかった。
まぁでももういいんだ。
どうせ俺達は親友だし、何があっても親友だし。
そうだ、あいつに言えなかった代わりに
月にでも願っとくか。
『月に願いを』
雨の音が好き
雨が降ったあとの匂いが好き
窓に伝う雨の雫が好き
「雨やだねー。」と言ってる貴方が好き
雨が降ると、傘を持ってきてるのに
「雨、降り止まないね。」
とここに留まる貴方が好き
雨の日は1つの傘で送ってくれる貴方が好き
いつの間にか左の肩が濡れてる貴方が好き
だから私は雨が好き
『降り止まない雨』