11/30/2024, 3:26:52 PM
「……ねぇ、泣かないでよ」
そう言いながら困惑した表情をする貴方。
どうして私が泣いているのか、まるで分かりませんみたいな顔なんてしちゃって。
『泣いて、ない』
私のその返事を聞いた貴方は小さく溜息を吐いた。
いかにも " めんどくさい " なんて顔に出てる。
こうなった原因は随分と前から約束していたデートを
すっぽかされたから。
ただ忘れていただけならまだ許せる。多分。
いや、許せはしないだろうけれど、まだマシだったはず。
目の前で困惑するこの男は、次の日に彼女である私とのデートを分かっていたのに、先輩から誘われた麻雀にノったのだ。初めは断っていたらしい。嘘がつける人間ではない事は分かっているからそこは疑わないけれど、なら最後まで断りきれよ。
案の定朝まで飲酒+麻雀ときた。
どうやら途中で私とのデートの約束は頭から抜け落ちたらしい。
結局この日はデートなんて出来る雰囲気でもないからもちろん解散。
後日、私の家の玄関先で綺麗な土下座をかました彼と再度デートをした。
罪悪感からか、集合の30分前に私の家まで迎えにきた。
そこまではいらないのに。
・
『何笑ってんの?』
「んー、ちょっと昔のこと思い出してただけ」
『へぇ?』
「あんなに綺麗な土下座見た事なかったなぁ、って」
忘れて、なんて頭を小突かれる。
目の前であの人同じように困惑した顔を見せる彼。
ただあの日と違うのは、彼の困惑の中に暖かさが宿っている事。
『……ねぇ、泣かないでよ』
あの日と同じセリフ。
「泣いて、ない」
ただ一つ違うのは、これが嬉し涙だということ。