「たとえ間違いだったとしても夜華(よか)がそう思うならやってみなさい」
「・・・・・・・・・っ、ほんと!!?」
驚く私にお父さんはコクリと頷いてみせた。
初めて首を縦に振った父に涙さえ出てきた。
「最初は反対してたけど、夜華の人生だもんな。
夜華の好きにしなさい。
けど、何か困ったことがあったら必ず言うこと。
そして1日に1回は連絡を入れること。
これは絶対だ。これが守れないのだったら東京に行くことは許さない。」
「うん。分かった。わかりました。
ありがとう」
私は小さい頃から歌手になりたかった。
歌だけは唯一得意だって胸張って言えたんだ。
だから高校に行かないで中学を卒業したら東京に行きたかった。
路上ライブから初めて、歌で人の心にあかりを灯せるような歌手になるんだ!
1週間前まではお父さんから反対されてた。
「そんなの現実的じゃないからやめなさい」って。
心配なのもわかる。
幼い頃にお母さんを亡くしてお父さんが男手一つで育ててくれた。
それは分かってたけどどうしても夢を諦めきれなかった。
諦めようと思った。
けど無理なんだ。一度なりたいって思ったら思いは消えてくれなかった。
だから何回も何回もめげずにお父さんを説得した。
そしたら今日、やっと認めてもらえたんだ。
夢は誰かに言わないと始まらないから。
誰かに語らないと始まらないから。
生半可な努力じゃ報われない。
これからどんなことがあるか分からない。
もしかしたら東京で路上ライブやっても挫折ばかりかもしれない。
けど、私は一歩踏み出したい。
例えこの道が間違いだったとしても今動かなかったら後悔すると思うから。
今を全力で駆け抜ける。
未来の私を見たら、今の私は失望するかもしれない。
「何してるの、こんははずじゃないでしょ」
「情けないね、やりたいことできてないじゃん」
「馬鹿みたい」
このまま行くとそう言われる気がする。
そう分かってるのに変えられない。
今が人生の分岐点だ。
どうしたいのか、一枚の紙に希望を書いたり面談でどう話すか、親にやりたいことを打ち明けるかでこれからの私の人生は大きく変わる。
正直、未来を考えるのは怖い。
幸せなのか、不幸なのか、後悔してるのか、満足してるのか、分からない。
私はこれから楽な道に逃げるのか、それとも勇気を出してちゃんと夢を追うのか。
分からない。
だから私が未来を見れるとしたら、いろんな未来をみたい。
こんな仕事に就いた私。
あんな仕事に就いた私。
全てのパターンを見て決めたい。
まぁそんな都合のいいことがあるわけないけどね。
自分の未来は自分しか変えられないのも分かってるし。
あぁ、人生嫌なことも考えないと行けないだなんて、酷いな。
でもそんなもんか
無色の世界
毎日同じ色のない生活をただ淡々と過ごして嫌になる。
楽しいことよりも苦しいこと悲しいことの方が多い。
ただ、そんな私の色の無い世界でも
本があるだけで輝くんだ。物語を書くだけで頑張ろうと思えるんだ。
学校でネタが思いつくかもしれないってそう思ったら「学校行きたくないなぁー」って暗い気持ちが少しだけ明るくなる。
笑顔になれる。
書くだけじゃなくて読むのはもっと幸せな気分になる。
小説が全てだ。
小説のおかげで毎日が楽しい。
小説と出会えたから今の私がある。
小説と出会ったあの小学生の時、ちゃんと
小説を読んでなかったら心を動かされてなかったら今の私はいなかった。
四六時中暗い気持ちでいたかもしれない。
現実なんて見たくない。辛い思いをしたくない、学校なんて行きたくない。人の視線なんて気にしたくない。
人の気持ちなんて考えたくない。
だけどやりたくないことも小説があれば頑張れるから。
色の無い世界が少しだけ色ずくから。
今日も大好きな小説を手にする。
学校で1番地獄なこと。
それは好きじゃない人と隣の席、もしくは近くの席になることだ。
特別な存在なんて作れない
裏切られた時怖いから
嫌われた時怖いから