のぞみ

Open App
10/7/2023, 10:53:54 AM

力を込めて


「もうこの年じゃねぇ〜。ここから就職ってなると採用してくれる会社も少ないだろうし、無理だわぁ。」


私は友人とお茶していると時そう言って嘆いた。



・・・・もう、45なのだ。

だいぶ若い頃に妊娠して、旦那と子育て協力してやってきて、娘が社会人で家を出る年になるとあっという間に年は45歳になっていた。


今からまた新しいことにチャレンジするには遅過ぎただろう。



「何言ってんの!!まだいけるでしょ!?
45歳だって50歳だって60歳だって関係ない!
人生一回なんだよ?
好きなことやっとかなくちゃ!
やりたいなら今からでも実行すべき!」


学生の頃から変わらなく、明るくて、元気でサバサバしている性格の友人が勢いよく言ってきた。


「でもね「でもじゃない!一度っきりの人生後悔してもいいの!?
できないって決めつけるんじゃなくて、一度面接受けに行ってきな!ほら私があんたの心に力を送ってあげるから!力込めて、踏ん張って、人生の第二のスタート頑張れ!」


ったく、本当に学生の頃から変わんないなぁ。


ふふっと笑いが込み上げていて、なんだかやれる気がしてくる。


人生の第二のスタート。


頑張ろう。

ここからまた私の人生が始まる。





友人に背中を押されて、チャレンジすることに決めた。




さあ、力を込めて、第一歩を。

10/5/2023, 11:41:21 AM

昨日の続きです。



行きたくない。

けど行かなきゃならない。


私は桜華財閥の一人娘。

周りは
「羨ましい。私もそんな生活してみたい。」とか
「この家に生まれて幸せね。努力しなくてもなんでも手に入るわね〜」とか
「一生チヤホヤされて生きていけるのねぇー」

なんて、勝手なことを言うけど私は普通の家に生まれたかった。
貧乏でも、食べるものがいいものでなくてもいい。

ただ家族みんなで笑って食卓を囲むの。

普通の高校生のように放課後はカフェなんて言って恋バナして、会話に華を咲かせるの。

周りからの視線を気にせずに楽しく外を歩けるの。


想像するだけでも幸せな気分になる。

お嬢様なんて、全然いいことなんてないのに。
小さい頃から、食事のマーナを教えられて。
家族で食べることなんて滅多にない。ただメイドが見てるだけ。
大金持ちのお嬢様学校に通って、帰りの放課後はSPに見守られながら真っ直ぐに家に帰らないといけない。
同級生なんて、自分の家の自慢ばかり。楽しくない。


たまに、周りからの言葉に叫びたくなる。

「変わりたいなら、変わってあげるよ!
わたしは普通に生活したいの!誰か変わってよ!」

って。

実際はそんなこと言えやしないけど。


鏡に映る化粧をして綺麗なドレスに身を包んでいる着飾られた私の姿。

鏡に映る私は笑えるほど酷い表情をしていた。


どこにいても1人でいても息苦しい。

もう全て投げすてたい。
こんな家出てしまいたい。

そう思うけど、すぐに頭の中に浮かぶのはお父様の顔。


「はぁー。」

ため息をつくと、すぐにお手伝いさんが入ってきた。

「麗様。パーティーのお時間です。」

「分かりました。今行きます。」


今すぐにでも帰りたいと願っている自分の重たい腰を上げて、会場へ向かった。


♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈••



「この子がわたくし、桜華 利秀の一人娘、桜華 麗です。これからお世話になると思いますのでよろしくお願いいたします。」


「初めまして。桜華 麗です。
これからよろしくお願いいたします。」


子供の頃に身につけた愛想がいい綺麗な微笑みを浮かべて挨拶をする。


お偉い様方の反応は・・・・・・・上出来か。


「ほぅ。綺麗なお嬢ですねぇ。
ぜひ、うちのバカ息子の嫁にきてほしいぐらいだよ。」


「ふふっ。口がお上手で。」


吐き気がする。

こんなジジイ達に笑顔を浮かべて、ご機嫌を取ってる自分にも。
いやらしい笑みで私を見てくるジジイ達にも


そんな気持ちを表に出すことは許されるわけもなく、言葉とともに取り繕う。


そんなふうに笑顔でいれば、一通りの挨拶は終わる。

少し離れたところでお父様と2人きりになる。


「麗。もっと、話さんか。相手は気に入られれば得するお偉い様だぞ。お前ならできるな?あの時のように私は娘にがっかりはしたくないからな。」


お父様の居丈高な様子に少しだけ恐れを感じ、首を縦にふる。


「はい。お父様のご期待に応えられず申し訳ありません。次はもっと必ず完璧に振る舞います。」

「それでこそ私の娘だ。
今日はもういい。私はまだやることがあるから、麗は会場の中にいなさい。多少はゆっくりしてていい。
でも、桜華財閥の娘の威厳を忘れずにな。
誰かから話しかけられたら完璧な態度で振る舞えよ。
私の娘なんだ。それができるな?」

「はい。承知いたしました。」



お父様は私の頷いたのを確認して、私の元を離れた。



苦しい。

どこにいてもどんな時でも。

休んでていいと言われても、後に続く言葉が気を休ませない。


お父様から出る言葉はいつも決まってる。
「どこにいても、桜華財閥の娘だと言うことを忘れるな。」
「常に完璧でいろ。」
「がっかりしたくない。」

そんな言葉ばかり。

気持ちは分かるんだ。
お父様も、ここまで先代が完璧に作り上げてきた桜華財閥を潰してはいけない。娘の私が少し誤った振る舞いをすることで事が大きく変わることだってある。

だから、お父様も必死になる。
私にも完璧な態度を求める。

一度の失敗は許されない。


小さい頃、小学6年生に一度だけ失敗したことがある。

それは小さく事は済んだけど、お父様にはすごく怒られた。


「私をがっかりさせるな!私の娘なんだから、私が絶対に恥をかくことをするな!
いいか。常に完璧でだ。
泣くな!泣いても何も変わらないし、許されない!
次こそ失敗しないように努力しろ!」


お父様のあんなに怒った顔は見たことがなくて涙が溢れるけど、それさえ許してもらえなかった。

お父様はその日からもっと厳しくなり、稽古やマナーの勉強が寝るまで続いた。

その日から私は知識を頭の中に入れ込み、完璧に振る舞えるように頑張った。


お父様の笑顔はしばらく見ていない。


昔のことを思い出すと頬から笑みが消えそうになるが、必死で取り繕って、端に移動してワインを注ぐ。

すると、急に音が鳴り始めた。

ダンスの時間のようだ。


男女がペアになって踊るらしい。
なら私も踊らなければならない。

そう思って周りを見回すと1人の男性が誘ってきた。


「一生に踊りませんか?」

「もちろん。光栄ですわ。」


笑顔で受け入れて踊り始める。

それからはそれの繰り返しだ。

曲が終わりに近づき、あと1人ぐらいで終わりかなっと思った時、



見る景色が停止した。


周りの踊っている人達はピタリ止まり、動かない。
お父様も動いていなかった。


・・・・・どうなってるの?


不思議すぎる出来事に意味がわからなくなった時


「おねーちゃん。」


声がした。

声の方を向くとそこには、

1人の男の子。


5歳ぐらいの男の子だ。

この大人だらけのパーティーに子供が1人だけいて、その子は動けている。

どう言うことなのだろう?



「びっくりさせてごめんね。おねーちゃん。
ここはね、僕が世界を停止したんだ。
だから、おねーちゃんと僕以外は動かないよ。」


「あなたがしたの?なんで?」


男の子はうーん。と言って笑う。

「だってこのままにしてたらおねーちゃん。壊れちゃうから。だから止めちゃった。今は誰も見てないし、誰もいないから、安心して休んでいいよ?」


壊れちゃう、か。


「おねーちゃんにも休む時間があっていいんだよ。
お嬢様らしくしなくていいの。
ありのままでいていいんだよ。この世界は1時間。
1時間しかあげれないけど、ごめんね。ゆっくり休んで。ご飯もたくさん食べて。なーんにもきにしなくていいよ。」


もう何がなんだかわからないけど、もういいと思った。


「このドレス脱いできていい?」

「いいよ。」

ドレスを脱いで身軽になる。

お腹が空いたなと思って、ご飯をご馳走になる。

「人の目なんて気にしなくていいからね。」


それからは食べ方も気にせずに思い切り食べた。

そして、控え室のベットに横になって好き放題する。



少し羽目を外しすぎかと思ったけど、誰も見てないならいいやってなって、自由に過ごす。


生きてる中で1番楽だったと言ってもおかしくない時間だった。

もうすぐ1時間が経つ。


もうこの時間が終わる。


名残り惜しく思った時、


「楽しめたかな。」


いつの間にか消えていた男の子がまた現れて、そう言ってきた。


「うん。楽しめた。
ありがとう。」


「おねーちゃん。きつい時は休んでもいいんだよ。
例え周りがなんと言おうがおねーちゃんは1人の女の子。
桜華 麗 じゃなくて、普通の女の子の麗でいてもいいんだよ。僕はそっちの方が好きだよ。」

「でもーーーーー「待ってて、もうすぐ迎えにいくから。僕が君を救うから。」


謎の言葉を残して消えた。


それからは普通に世界が動き出した。



なんだったのだろうか。

不思議な男の子。
迎えに行く?ってどう言うことだろう?


パーティーでは、男の子のことが頭から離れなかった。


♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈••


それから2日経った夜

コンコン

誰かがドアを叩く音がした。


「麗様。旦那様がお呼びです。」


お手伝いさんがそう言ってきた。


お父様?
なんのようだろう。

私なんかしてしまったかな?


少しの不安を抱えながら長い廊下を歩いてお父様の部屋の前につく。


すぅーー


深呼吸をしてドアを叩く。


コンコン

「お父様。麗です。」

「麗。入りなさい。」

「はい。」


返事をしてお父様の部屋に入る。


「麗。そこに座りなさい。」

「はい。」


お父様と対面に座る。


「麗。当たり前だかお前には将来、俺が決めた相手と結婚してもらう。」


結婚・・・・・・。

この家に生まれてきた時点で好きに結婚できるわけがない。

だから覚悟はしていた。


まさか、こんな早くに話がくるとは思っていなかったけど。

だって、私はまだ高校1年生だ。

それなのにもうこんな話・・・・・。


「なんだ?その顔は。分かっていたことだろう。」

「はい。分かっています。
ただ少しびっくりしただけで、大丈夫です。」


お父様が少し顔を顰めて言ってきたから慌てて言葉を尽くす。


「そうか。で、お前には今度まず、そのお見合い相手と2人だけで会ってほしい。それからはお互いの親も入れて会うことになる。」

「分かりました。」


そう言ってお父様の部屋を出て自分の部屋に戻る。


部屋から星いっぱいの夜空を見ながらぼんやりと考える。



お見合い・・・か。

したくない。なんて言えないけど。

せめて、相手が優しい人でありますように。


そう祈って眠りについた。


♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡••┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡


そしてお見合いの日


家を出る前、お父様に呼び出されていた。


「麗。相手はこれから家の財閥に大きく影響を与える佐々木財閥の息子だ。
失礼のないように。いつも以上に気を張って完璧にいなさい。
桜華財閥がかかっているから失敗は許されないからな。」

「はい。行ってきます。」


そう言ってお手伝いさんと家を出た。



佐々木様とはレストランで会う予定だ。


レストランについて、席に座って佐々木様を待った。


そして待つこと3分


「待たせて申し訳ありません。佐々木財閥、佐々木 剣です。」

そんな声がした。


佐々木様が来たのだ。


緊張しながらも立って挨拶をする。


「はじめ──── っ!」


「初めまして、桜華財閥の桜華 麗です。」と言おうとした。

けど、佐々木様の顔を見た瞬間、パーティーの時の男の子の姿が脳裏によぎった。


似ている。

のんびりとした雰囲気も。
ありのままでいていいと言ってくれたあの微笑みも。

何もかもがあの時の男の子に見えた。


言葉を失ってもう一度、彼の方を見るとにっこり笑ってこっちを見ていた。


いけない。まずは挨拶だ。
挨拶もせずに固まるだなんて、不思議に思われるし、失礼だ。


『完璧でいなさい。』



お父様の声を思い出す。



「失礼致しました。
初めまして。桜華財閥、桜華 麗です。
佐々木様。これからよろしくお願いいたします。」

「うん。よろしく。
ここにいる者達は僕と麗を1人にしてくれないか?」


佐々木様の一言で周りの大人達は全員去っていく。


そして、私達は2人きりだ。


佐々木様を見るとやっぱりあの男の子と重ねてしまう。

じっーーと思わず見てしまう。


「僕の顔に何かついてる?」

「い、いえ。さ、先程から申し訳ありません!」


なぜだろう。こんなに知らず知らずのうちに気が抜けてしまう。


「そんな堅苦しい態度取らないでいいんだよ。
無理に着飾らなくてもいい。
桜華 麗 じゃなくて、普通の女の子の麗でいてもいいんだよ。僕はそっちの方が好きだよ。」


「っ!」


男の子から言われた言葉だった。


佐々木様は、君は─────


「あの時の男の子。」


信じられない思いで見つめると、


「ピンポーン。」


にっこりと笑って指をオッケーとし指を曲げ
て返してきた。


「僕がこれから君の旦那様になる。
嫌だったら断ってもいいよ。
君が断っても、桜華財閥が不利になるようにはしない。
けど僕は、麗。君が好きだ。1人の女の子として。
僕と一緒にいてくれるのだったら一生愛し抜くと誓おう。」



断ってもいい。

そう言う。


けど、1人の女の子として見てくれる。
そう言ってくれたのは人生で初めてだった。


あの時、安らぎの時間をくれた。

優しい笑顔でそのままでいいと言ってくれた。
愛し抜くと言ってくれた。



だったら─────



「断ることはしません。
これからよろしくお願いします。」



嬉し涙を流しながらそう言うと


君は愛おしいものを見るような温かく柔らかい微笑みで言った。


「麗。愛してる。」




                      完







読んでくれてありがとうございました。




10/4/2023, 11:35:59 AM


行きたくない。

けど行かなきゃならない。


私は桜華財閥の一人娘。

周りは
「羨ましい。私もそんな生活してみたい。」とか
「この家に生まれて幸せね。努力しなくてもなんでも手に入るわね〜」とか
「一生チヤホヤされて生きていけるのねぇー」

なんて、勝手なことを言うけど私は普通の家に生まれたかった。
貧乏でも、食べるものがいいものでなくてもいい。

ただ家族みんなで笑って食卓を囲むの。

普通の高校生のように放課後はカフェなんて言って恋バナして、会話に華を咲かせるの。

周りからの視線を気にせずに楽しく外を歩けるの。


想像するだけでも幸せな気分になる。

お嬢様なんて、全然いいことなんてないのに。
小さい頃から、食事のマーナを教えられて。
家族で食べることなんて滅多にない。ただメイドが見てるだけ。
大金持ちのお嬢様学校に通って、帰りの放課後はSPに見守られながら真っ直ぐに家に帰らないといけない。
同級生なんて、自分の家の自慢ばかり。楽しくない。


たまに、周りからの言葉に叫びたくなる。

「変わりたいなら、変わってあげるよ!
わたしは普通に生活したいの!誰か変わってよ!」

って。

実際はそんなこと言えやしないけど。


鏡に映る化粧をして綺麗なドレスに身を包んでいる着飾られた私の姿。

鏡に映る私は笑えるほど酷い表情をしていた。


どこにいても1人でいても息苦しい。

もう全て投げすてたい。
こんな家出てしまいたい。

そう思うけど、すぐに頭の中に浮かぶのはお父様の顔。


「はぁー。」

ため息をつくと、すぐにお手伝いさんが入ってきた。

「麗さま。パーティーのお時間です。」

「分かりました。今行きます。」


今すぐにでも帰りたいと願っている自分の重たい腰を上げて、会場へ向かった。


♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈••



「この子がわたくし、桜華 利秀の一人娘、桜華 麗です。これからお世話になると思いますのでよろしくお願いいたします。」


「初めまして。桜華 麗です。
これからよろしくお願いいたします。」


子供の頃に身につけた愛想がいい綺麗な微笑みを浮かべて挨拶をする。


お偉い様方の反応は・・・・・・・上出来か。


「ほぅ。綺麗なお嬢ですねぇ。
ぜひ、うちのバカ息子の嫁にきてほしいぐらいだよ。」


「ふふっ。口がお上手で。」


吐き気がする。

こんなジジイ達に笑顔を浮かべて、ご機嫌を取ってる自分にも。
いやらしい笑みで私を見てくるジジイ達にも


そんな気持ちを表に出すことは許されるわけもなく、言葉とともに取り繕う。


そんなふうに笑顔でいれば、一通りの挨拶は終わる。

少し離れたところでお父様と2人きりになる。


「麗。もっと、話さんか。相手は気に入られれば得するお偉い様だぞ。お前ならできるな?あの時のように私は娘にがっかりはしたくないからな。」


お父様の居丈高な様子に少しだけ恐れを感じ、首を縦にふる。


「はい。お父様のご期待に応えられず申し訳ありません。次はもっと必ず完璧に振る舞います。」

「それでこそ私の娘だ。
今日はもういい。私はまだやることがあるから、麗は会場の中にいなさい。多少はゆっくりしてていい。
でも、桜華財閥の娘の威厳を忘れずにな。
誰かから話しかけられたら完璧な態度で振る舞えよ。
私の娘なんだ。それができるな?」

「はい。承知いたしました。」



お父様は私の頷いたのを確認して、私の元を離れた。



苦しい。

どこにいてもどんな時でも。

休んでていいと言われても、後に続く言葉が気を休ませない。


お父様から出る言葉はいつも決まってる。
「どこにいても、桜華財閥の娘だと言うことを忘れるな。」
「常に完璧でいろ。」
「がっかりしたくない。」

そんな言葉ばかり。

気持ちは分かるんだ。
お父様も、ここまで先代が完璧に作り上げてきた桜華財閥を潰してはいけない。娘の私が少し誤った振る舞いをすることで事が大きく変わることだってある。

だから、お父様も必死になる。
私にも完璧な態度を求める。

一度の失敗は許されない。


小さい頃、小学6年生に一度だけ失敗したことがある。

それは小さく事は済んだけど、お父様にはすごく怒られた。


「私をがっかりさせるな!私の娘なんだから、私が絶対に恥をかくことをするな!
いいか。常に完璧でだ。
泣くな!泣いても何も変わらないし、許されない!
次こそ失敗しないように努力しろ!」


お父様のあんなに怒った顔は見たことがなくて涙が溢れるけど、それさえ許してもらえなかった。

お父様はその日からもっと厳しくなり、稽古やマナーの勉強が寝るまで続いた。

その日から私は知識を頭の中に入れ込み、完璧に振る舞えるように頑張った。


お父様の笑顔はしばらく見ていない。


昔のことを思い出すと頬から笑みが消えそうになるが、必死で取り繕って、端に移動してワインを注ぐ。

すると、急に音が鳴り始めた。

ダンスの時間のようだ。


男女がペアになって踊るらしい。
なら私も踊らなければならない。

そう思って周りを見回すと1人の男性が誘ってきた。


「一生に踊りませんか?」

「もちろん。光栄ですわ。」


笑顔で受け入れて踊り始める。

それからはそれの繰り返しだ。

曲が終わりに近づき、あと1人ぐらいで終わりかなっと思った時、



見る景色が停止した。


周りの踊っている人達はピタリ止まり、動かない。
お父様も動いていなかった。


・・・・・どうなってるの?


不思議すぎる出来事に意味がわからなくなった時


「おねーちゃん。」


声がした。

声の方を向くとそこには、

1人の男の子。


5歳ぐらいの男の子だ。

この大人だらけのパーティーに子供が1人だけいて、その子は動けている。

どう言うことなのだろう?



「びっくりさせてごめんね。おねーちゃん。
ここはね、僕が世界を停止したんだ。
だから、おねーちゃんと僕以外は動かないよ。」


「あなたがしたの?なんで?」


男の子はうーん。と言って笑う。

「だってこのままにしてたらおねーちゃん。壊れちゃうから。だから止めちゃった。今は誰も見てないし、誰もいないから、安心して休んでいいよ?」


壊れちゃう、か。


「おねーちゃんにも休む時間があっていいんだよ。
お嬢様らしくしなくていいの。
ありのままでいていいんだよ。この世界は1時間。
1時間しかあげれないけど、ごめんね。ゆっくり休んで。ご飯もたくさん食べて。なーんにもきにしなくていいよ。」


もう何がなんだかわからないけど、もういいと思った。


「このドレス脱いできていい?」

「いいよ。」

ドレスを脱いで身軽になる。

お腹が空いたなと思って、ご飯をご馳走になる。

「人の目なんて気にしなくていいからね。」


それからは食べ方も気にせずに思い切り食べた。

そして、控え室のベットに横になって好き放題する。



少し羽目を外しすぎかと思ったけど、誰も見てないならいいやってなって、自由に過ごす。


生きてる中で1番楽だったと言ってもおかしくない時間だった。

もうすぐ1時間が経つ。


もうこの時間が終わる。


名残り惜しく思った時、


「楽しめたかな。」


いつの間にか消えていた男の子がまた現れて、そう言ってきた。


「うん。楽しめた。
ありがとう。」


「おねーちゃん。きつい時は休んでもいいんだよ。
例え周りがなんと言おうがおねーちゃんは1人の女の子。
桜華 麗 じゃなくて、普通の女の子の麗でいてもいいんだよ。僕はそっちの方が好きだよ。」

「でもーーーーー「待ってて、もうすぐ迎えにいくから。僕が君を救うから。」


謎の言葉を残して消えた。


それからは普通に世界が動き出した。



なんだったのだろうか。

不思議な男の子。
迎えに行く?ってどう言うことだろう?


パーティーで、男の子のことが頭から離れなかった。



                続く?かもです。
 






9/30/2023, 2:33:24 AM

静寂に包まれた部屋

静寂に包まれた部屋はいつもに増して色々なことを考えてしまう。
いいことばかりではない。


でも、私はそんな時間が好きだ。

1人ゆっくりと過ごす。


嫌なこともあるけど、やっぱり好きかな。

9/20/2023, 10:36:44 AM

大事にしたい


「大事にしたいの。今この瞬間を。
生きてる。脆くて弱いこの心臓が動いてくれている最後の時まで。愛紅と愛華とあなたとみんなで笑っていたい。」


妻は弱々しい笑顔でそう言った。


君への想いは今でも出会った頃から変わっていないこの愛しい気持ちが君の願いを叶えたいと言っていた。

だから、

「そうだな。そうしよう。医師にはそう言っておく。」


医師にはあまり動かない方がいいと言われている。
けど、妻は最後の時間を家族とたくさん遊んで、子供達に料理を作ってたくさん笑いたいと言う。

だから俺は妻の願いを叶えるんだ。


「愛してる。ずっと。」


                       完

Next