この世界は無色の命が集まって出来ている
透明な小さいモノが積まれて
そこから色の命が生まれる
真っ暗な闇に包まれて宙の橋を渡る命もある
命たちはただただ 生きる ことを考える
そうやって世界は己の存在価値を知らずに
新しい未来をつくるのだ
後、何度進めば辿り着けるだろう。
どんな高い壁だって乗り越えてきたのに。
今まで多くのものを捨ててきたのに
得するものが見えないのだ。
頭がくらくらして、視界がぼやけて
死にそうだ。
これでやっと存在価値を証明できたところだったのに。
何が間違っていると言うんだ!?
善意のことしかやり遂げなかった。
それが悪いというのか…………!
刺すなら一途に刺せばいい
だが、あの世でも夢を見続けたい。
息が白くなった
冷たい風が吹くようになった
雪が積もって踏み込むとザクザクと音が鳴る
嗚呼、冬は今年も厳しいな
コートを被った背中は汗で濡れている
靴下は脱げやすいし、雨で雪道がぬかるんでいると
歩きにくい
今年も寒さが身に染みる…………
「疲れた〜」
身体をソファーに埋めて明かりのついた天井を見上げる。
今日も、心の中で叫ぶ。
残業……キツすぎ!
入社してから二年。相変わらずの仕事量に頭がオーバーヒートしそうだ。
全く………あの上司、散々私に任せてきやがって!
次の日に上司のカツラを皆にバラしてやるんだからね。
何か食べようかな……。
でも、今はそんな気分じゃないんだよね。
「あーあ。癒しが欲しい……」
よし。とりあえず猫と犬の動画でも見てよう。
鞄からスマホを取り出して電源を入れる。
パッと光り、ロック画面が映った。
パスワードの入力を完了してホーム画面に変える。
「あ…………通知来てるじゃん」
SNSからだ。通知の主は私の好きなアーティスト。
刺激的な演奏が私の心に痺れたからだ。
SNSを開いて早速、確認。
「ライブ配信のお知らせか」
もう、知っているからそこまで重要ではなさそう。
他に重要そうなのは無いだろうか。
探れば探るほど、あっという間に時間が経った。
暫くスクロールしていると、天体関係の情報が流れてきた。
内容は今夜の月を語っているものだった。
「今夜は三日月か………」
そういえば駅から出たとき、三日月が見えた。
綺麗だなと思いつつそんなに気にしていなかった。
何となく気になる。身体を起こしてカーテンをめくる。
「わぁっ」
今日は快晴だったから星空をちゃんと観測できる。
窓を開けると冷たい風が入り込んだ。
「寒っ!」
季節を感じる。
こうやって、天体観測したのは幼少期以来だ。
確か、小三の頃に友達と一緒に流れ星を見に行った。
「何を願ってたっけ……」
忘れてしまった。いや、単に流れ星を見てただけかも。
「………夕食の準備しよう」
そう思いながら窓とカーテンを閉じて、キッチンに向かおうとした時、引き出しが開けっ放しの棚にぶつかる。
引き出しから何かがヒラヒラと落ちてきた。
薄い水色の短冊だ。
刻まれた文字を見つけて、目を丸くした。
『ギターリストになれますように』
あ。今日も飾ってある。
デパートのショーウィンドウの中に色鮮やかな
コーデセットが飾られている。
ここに置かれた時から通行人からの注目をいつも集めているのだ。
個性的で独特な世界観を表現しているからだと思う。
私は憧れてるけど、見ることしか出来ない。
ウチは貧乏だから去年から貯めているお小遣いでさえも
まだ足りないくらい。
だからいつもここを通る時は鑑賞だけしておいてる。
勿論、時間に余裕があるときにだけ。
でも、もう季節は変わる。
このコーデセットはもうすぐで片付けれられるんだろうな…………。
____数日が経ってあのコーデセットは無くなった。
寂しさを感じた私はショーウィンドウから目を離す。
「あれ?」
ショーウィンドウの中に何となく惹かれるコーデセットを
見つける。それになぜだか懐かしいような…………。
あ。このコーデセットの雰囲気。
あのコーデセットに若干似ているような………。
色とりどりな所、個性的で独特な表現の所。
あ。
このコーデセット、好きだな。
また胸が熱くなる。
いや、このコーデセットだけじゃない。
他のコーデセットも何だか惹かれる。
前は気に入ったモノしか見えていなかったのに。
ハッとした。
あのコーデセットが見せてくれた表現で私は
広い世界観を知れたから…………?
私は色とりどりな見方がもっと出来たということなのかな。
『色とりどり』