遠くの山が少し色づきだした。
秋の訪れを眺めながら今年もそろそろ始めますかとひとつ背伸びをする。
「明日あたりから藁の用意すんべ」
「器具の手入れも忘れないでくださいね」
「あぁ、毎年の事だで笠作る道具はしっかりあるわい」
冬に向けて笠の大量生産の準備を始めましょう。
(秋の訪れ)
笠地蔵のオマージュ、笠は秋頃から作るのです。
「この広い世界で我らを倒して終わりだと思っているのか?」
息も絶え絶えに鬼が問うてきた。
「我らの寿命は長い。その間にどれだけ増え広がっていると思っている?」
だろうな。だからまだこの旅は終わらない。
「我らを倒し切る前にお前の寿命が来るのが先よ」
そうはいかない。倒し切る。
この鬼ヶ島は始まりに過ぎない。戦いの旅は続く。
(旅は続く)
桃太郎のオマージュ、相当な覚悟で旅に出る。
古いアルバムを引き出して数ページめくる。
縁がちょっと欠けたモノクロ写真。
この写真に写るのは若い頃のおばあちゃんのおばあちゃんとおばあちゃんのおじいちゃん。
おばあちゃんは頭巾を被って恥ずかしそうな顔で、おじいちゃんは大きな口を開けて笑っている。
確かこの写真を撮った時におばあちゃんのおばあちゃんは妊娠してたんだって聞いた事がある。
それにしても、おばあちゃんのおじいちゃん、随分毛深くて大きな耳と大きな口が目立つなぁ。
ぱたんとアルバムを閉じる。このモノクロ写真はずっとずっと残るだろう。
(モノクロ)
赤ずきんちゃんのオマージュ、昔の昔の赤ずきんちゃんのモノクロ写真で見る不思議な家系。
加齢による体調不良の為寝たきり状態のかぐや姫。
一日中うわ言のように「あの方はまだ来ないのね」と繰り返しています。
月の世界にも永遠なんて、ないのです。
永遠なんてないけれどかぐや姫はあの方が来るのをまだ待っているのです。
(永遠なんて、ないけれど)
かぐや姫のオマージュ、間に合うかなぁ?
あぁ、そんな、なんて事。
お婆さんが住む森を前にして赤ずきん気付きました。
虫除けスプレーも蚊取り線香も虫刺され薬もすっかり忘れて来てしまったのです。
虫除け無しでこの森に入るのは無謀なのです。
全身至る所を刺される想像だけで涙が出るほどです。
(涙の理由)
赤ずきんちゃんのオマージュ、お婆さん家には強力な虫除け装置があるのでオオカミでも安心。