「5つの宝を持ってきた者に妾は着いていこう」
そう言ってから10日、ぞくぞくと宝を持った遣いがやって来た。
本当に持ってこられるとは思っていなかった。
心だけ、逃避行させて上っ面だけは真面目に見せてそれぞれに対応する。
1日が長い。
(心だけ、逃避行)
かぐや姫のオマージュ、本当はその場から逃げたいはず。
昨日は竹林の奥地で雀が経営する宿に1泊し、今日は川を下って都のホテルへ泊まる予定だ。
以前は、鬼の住まう島で一晩中酒盛りに参加し、二日酔いのまま海の底の立派な建物の世話になった。
今後の予定は、月面の街と藁木煉瓦の家を巡りたいと思っている。
宿泊冒険家としてのエッセイも書かないといけないな。忙しくも充実した冒険を。
(冒険)
冒険家の旅行が冒険し過ぎている件について。
高い高い塔の上、遠くに見える街の景色しかないこの閉じられた部屋に私ひとりだけ。
時々御母様が来るけれど、塔の下から食料や物資を上げてくるだけ。
細い棒に籠を付けただけの物で上げてくる。
棒に掴まって逃げる事が出来ないようにだろう。
でも、もうすぐ逃げる事が出来るかもしれない。
何年も伸ばし続けたこの髪の毛をロープ代わりに塔から降りれるかもしれない。
お願い、お願いだから下まで届いて…
(届いて…)
塔の上のラプンツェルのオマージュ、魔法の髪でもなんでもなかったら。
ここは初めて来たはずなのに、頭の中で見た事のある景色として認識される。デジャブだ。
似た景色の断片を幾つも繋ぎ合わせ、補正され、記憶として呼び出される。
いつの景色なのだろう?
「まだあなたが1歳にならない頃に来たことがあるのよ」
デジャブじゃなかったようだ。
1歳にならない頃のあの日の景色が記憶に残っていたのか。
(あの日の景色)
デジャブ、正夢、その他もろもろ、記憶違いも多数あるよね。
神様、どうか大学受験合格できますように。
『うんうん、勉強頑張ってたわね。叶えてあげましょう』
神様、母の病気が早く良くなりますように。
『あらあら、親孝行で感心だわ。叶えてあげましょう』
神様、新幹線で窓側に座った人が何回もトイレに行きませんように。
『あぁアレね、ウザったいのよね。叶えてあげましょう』
神様、家のエアコンが直りますように。
『電器屋に行きな』
(願い事)
神様に願い事する時はちゃんと神主・宮司さんの指示通りに行いましょう。