高い高い塔の上、遠くに見える街の景色しかないこの閉じられた部屋に私ひとりだけ。
時々御母様が来るけれど、塔の下から食料や物資を上げてくるだけ。
細い棒に籠を付けただけの物で上げてくる。
棒に掴まって逃げる事が出来ないようにだろう。
でも、もうすぐ逃げる事が出来るかもしれない。
何年も伸ばし続けたこの髪の毛をロープ代わりに塔から降りれるかもしれない。
お願い、お願いだから下まで届いて…
(届いて…)
塔の上のラプンツェルのオマージュ、魔法の髪でもなんでもなかったら。
ここは初めて来たはずなのに、頭の中で見た事のある景色として認識される。デジャブだ。
似た景色の断片を幾つも繋ぎ合わせ、補正され、記憶として呼び出される。
いつの景色なのだろう?
「まだあなたが1歳にならない頃に来たことがあるのよ」
デジャブじゃなかったようだ。
1歳にならない頃のあの日の景色が記憶に残っていたのか。
(あの日の景色)
デジャブ、正夢、その他もろもろ、記憶違いも多数あるよね。
神様、どうか大学受験合格できますように。
『うんうん、勉強頑張ってたわね。叶えてあげましょう』
神様、母の病気が早く良くなりますように。
『あらあら、親孝行で感心だわ。叶えてあげましょう』
神様、新幹線で窓側に座った人が何回もトイレに行きませんように。
『あぁアレね、ウザったいのよね。叶えてあげましょう』
神様、家のエアコンが直りますように。
『電器屋に行きな』
(願い事)
神様に願い事する時はちゃんと神主・宮司さんの指示通りに行いましょう。
星が良く見える山頂へ登ってきたのは3時間程前の事だ。
ここで天体望遠鏡を設置するのは邪魔だし、そもそも担いで来るには重すぎる。
という事で、今回は【3x48星空観測用双眼鏡】を持ってきた。
3倍率だが、星空を見るには丁度いいスペックらしい。
これを使って星空を見上げ続けて気付けば3時間。
空に恋してしまった自分に呆れる。
このまま朝まで空恋は続くだろう。
(空恋)
星空観測用双眼鏡、良い商品です。
『本日天気は晴れ、西の風時に強まるでしょう。変わって南部地方は…』
ポータブルラジオのちょっと荒い音声を聞きながら砂浜を歩く。
天気予報の放送が終わってラジオの電源を切ってデッキブラシに跨る。
波音に耳を澄ませて風の流れを読む。
ふわっと浮き上がって空へ上がっていく。
街のシンボルとも言える時計台の方向へ向きを合わせて風任せに飛んでいく。
(波音に耳を澄ませて)
魔女の宅急便のオマージュ、時々Chillしに来てるのかな?