朝早くに届いた一通の手紙。
誰から送られたの書かれていないが、切手につかれた消印は隣町の物だ。
レターナイフでゆっくり封を切り、手紙を開くとどこかの塔の上からの視点で描かれたであろう絵と便箋が1枚入っていた。
『この塔に助けに来て』
と書かれた手紙と絵を交互に見て、あぁそうかと納得したように頷く。
あれだ、最近流行りの詐欺の一種だなと手紙を丸めてゴミ箱に放り投げる。
見事に外れた。
(手紙を開くと)
塔の上のラプンツェルのオマージュ、手紙で助けを求めたが詐欺と間違われたようです。
精一杯のおめかしをして馬車に乗って城へ向かう。
時間が無いわ、急いで急いでと馬に激を飛ばす。
途中で城の兵や大臣の格好の人の列とすれ違った。
ガラスの靴を大事そうに運ぶ人と目が合った気がする。
さぁもっと急いで!城は目の前よと言いながら、さっきすれ違った瞳の事を思い出していた。
(すれ違う瞳)
シンデレラのオマージュ、舞踏会の日にち間違えてるし靴運びの兵に一目惚れしちゃったどこかのお嬢様。
煙突の先には青い青い空が見える。
煙突内部をゆっくり慎重に登る。
少し間を開けてもう1人が登ってくる。
「滑るなよ?落ちたら底まで真っ逆さま。止まれないよ」
「怖い事言わないで!既に怖いんだから!!」
ゆっくりゆっくり慎重に。
青い青い空はもうすぐそこだ。
遂に煙突の先へ辿り着く。
もう1人もすぐに上がってきた。
「ここがてっぺんだよ」
「いい見晴らしね。でも狭いわ」
「そうだね、1人立ってるのがやっとかもしれないや」
ここに2人居るのは無理かな?とまた煙突の中を慎重に降りる。
青い青い空が遠ざかっていった。
(青い青い)
ヒツジ飼いの人形と煙突掃除屋の人形のオマージュ、オリジナルは星空に出たけど青い青い空にしただけ。
いつだったか飲み込んだ船は砂糖を運んでいた様でとても甘かった記憶がある。
どの海域だったかは覚えているが、その海域のどの辺りだったかまでは思い出せない。
他にもいろいろ運ぶ物によって味が違う船をいくつも飲み込んでいるから記憶がごっちゃなのだ。
また砂糖運びの船に逢えないかな?と甘い思い出を繰り返しつつ通りかかった舟を飲み込んだ。
お爺さんが1人乗った小型の舟だが腹の足しにはなるだろう。
あぁ、甘い甘い船は何処だろう?
(sweet Memories)
ピノキオの鯨モンストロの甘い思い出、甘党鯨って居るのだろうか?
後ろから嫌な気配が一気に迫って来る。
バックミラーに写ったそれは人型のように見える。
待てよ、今この車は70kmで走っているんだぞ?
明らかにこの世の者では無い事は確かだ。
「ターボババア」とか「マッハジジイ」と呼ばれる怪異の事は聞いた事がある。抜かれたら呪われると言われているあれだ。
抜かされなければ良いのだろ?と勢いよくアクセルを踏み込む。
後ろの人型が挑発に乗って更に近付いてきた。
もう少しで車に触れる距離になった瞬間、急ブレーキを踏む。
止まることに間に合わなかったであろう人型は車の後部にめり込むようにぶつかって来た。
急激な減速をした事で後ろから風と排気ガスの匂いが前方に流れた。
人型の怪異は諦めたのかその風と共に消え去って行った。
助かった。
(風と)
ターボババアの怪異のオマージュ、ぶつかられた後部が修理不能な程度に損壊している事に早く気付いて。