【消えない焔】

オレは人が好き。
どんな人も魅了する。

オレは『人のたらしこみ』が得意。
この声、この笑顔、この仕草、
全てを完璧に魅せる。

職場にとってオレは『看板的存在』で
新人を入社させる動機になる。

もちろん仕事も進んで働き、
後輩をしっかり育成している。

優しく丁寧に教え、困ったときはすぐに解決させる。

そんなオレは同僚の女性達をから
「大好き」「あなたが1番」
「たくましい」「デートしたい」と
好かれている。
しかも『既婚者』だ。困ったものだ。

オレもそんな女性達に
「君はオレにとって最高のパートナーだよ」
「君だけだよ」「ずっとこのまま君とペアで居たい」と
甘い言葉を吐いてたらし込める。

まるで高校時代に作ったハーレムを感じた。
あの頃のようにオレのくちは達者で困る。

【終わらない問い】
(※性的表現有り🔞)

オレには『旦那』として迎えたパートナーが居る。

最近、旦那の愛と繁殖本能が高ぶっているのか
ほぼ毎日 眠る前に行為をする。
もちろんオレも旦那も『男』なので
子供はできず無駄である行為だ。

それに、オレには『快感』が足りていない。

別に『嫌』という訳ではないが
心の底からは楽しめない。

そりゃ当然だ。
オレの心は初元カノに向いているから。

どちらも好き。
でもそれが許されないのはわかっている。

年に2度か3度ぐらいしか初元カノには会えない。
でもそれがちょうど良い。

LINEの連絡でおたがいの熱を保ち
いざ会って ホテルで身を重ねるのは
とても心地よく感じる。

初元カノとのこの『火遊び』のような行為に
焦れったくとも愛しく感じてしまい
オレをますますたまらなくさせる。

「君が欲しい」「愛してる」「可愛いよ」
そんな言葉をオレは耳元で囁く。

許されない関係と行為に背徳感があり、
初元カノを喜ばせてあげるだけで
オレは快感に感じていた。

…しかしいつかはタイムリミットが必ず来る。

オレはいつか養子を迎え、旦那と3人で暮らし、
初元カノは片思いしてる人と結ばれるかもしれない。

その時までオレの心はどうなっているかは
自分でも知らないだろう。

【揺れる羽根】
(※性的表現有り🔞)

興味本位で初元カノに聞いてみた。

「よくあるシチュエーションだけど、
もしオレ達で『ヤらないと出れない部屋』に
閉じ込められたらどうする？」

まだ昼間だというのに
オレはとんでもない質問をしてしまった。

少し気を使って「邪魔した。返信はいつでもいい。」と
つけたした。

初元カノは突然の内容に驚いたのか、
それとも呆れたのか、
その時は既読スルーしたが
夜の少し遅い時間に「普通にヤる。」と返信が来た。

「普通にヤるのかよ。意外だな。」
オレはそんな意外な返信に驚いたが少し嬉しかった。

オレ達はまだ本当の行為もしてないというのに
そう言い切っても良いのか
オレは疑問に思い、少し戸惑った。

「もし君が本当にその気があるのなら、
君を膝に乗せて、ある程度スキンシップをしたら
ベッドに倒れてその先の続きを楽しむよ。」

オレは少し初元カノをからかってそんな返信をした。

初元カノはオレの喜ばせ方をよく知っている。
その気にさせて冷たく突き放す。
『黒猫』のように気まぐれで悪くて良い女だ。
オレはそんな初元カノが大好きだ。

今度のプレイデートではちょっと強めに
マーキングしてやろうかと考えている。

胸元、太ももにオレの印を…♪

【秘密の箱】

オレの場合、『箱』ではないが、
『ノート』はある。

それはオレが11歳の頃から書いている。
ジャーナリングと日記がミックスされたような
ノートだ。

実家にはズラリと今まで書いできたものがある。

その内容は正直言ってあまり人に見せる
内容ではない…。

前は絵や文字をたくさん書いていたが
最近は忙しいため、スクラップばかりだ。

そのせいで字を書くことが減りったためか、
いざ文章を書くと上手く書けなくなっていた

得意としていた絵も描かなくなったせいか
描き方を忘れてしまった。

改めて紙に字を書くことは大切だと思う。

このデジタル化した現代社会、
字を書く機会が減り、退化している。

【秋風】
(※性的表現有り🔞)

前回、初元カノに会ったのは5月頃。
初元カノの誕生日が近かったので少し奮発して
高めのラ🔞ホテルにした。

いつもは普通の家の部屋と
変わらないようなホテルだったが、
今回は部屋もインテリアの装飾も豪華で
ベッドも部屋も風呂場ももちろん広く
まるでセレブにでもなった気分だった。
オレはこの部屋に自分で金を出すことに
少し驚きを感じていた。
初元カノはオレと以外にホテルなんて
行ったことないのでとても喜んでいた。

だが部屋が変わっても
ただオレ達はいつもの行為をするだけだ。

オレは初元カノの要望にこたえて
アイマスクと手錠をかけて快楽を与えた。

恥ずかしがりな初元カノは何も見えず、
自由を奪われているせいか更に興奮し、
オレが指や舌で体をなぞる度にピククピクと反応し、
クライマックスでは手を繋いで果てた。

行為後にはプールのように広い風呂を
泡風呂にしてバスタブを七色に光らせ
照らされるおたがいの肌にほれぼれしながら
オレ達は子供のようにはしゃいだ。

「ねえ 覚えてる？
あたしが初めてあなたの家に泊まった時も
泡風呂だったね」

初元カノが思い出話をし始めた。
どうしよう。
オレは初のお泊まりデートのことなんか
全然覚えていなかった。

ただ印象に残っているのは
まだ学生だった頃にこっそりした
行為のことぐらいしかなかった。

今、色々思い出したが
初元カノと知り合って13年も経っていた。
オレには当時、『友達』がいなかった。
ただ周りから嫌われる存在で
暗い日常を送っていた。

だが、ある時初元カノと出会って
オレの日常に彩りが出た。

それから仲良くなって、家にも来るようになって、
趣味を共有し合って、一緒に出かけたりもした。

それでオレ達が好奇心で初めてキスをした時の味を
今、ふと思い出した。

それはりんご味の赤い飴玉。
甘酸っぱかったのを覚えている。

放課後の時も家のベッドで
親に気づかれないように行為し、
修学旅行の時も布団を隣り合わせにして
誰にもバレないように触れ合っていた。

なんとなく今思うと
交際していなくても傍から見ると
『ただのカップル』でオレにとって本当の
『初めての彼女』だったのではないかと思う。

だからオレは『初元カノ』と呼んでいる。

もし8月の終わりごろの日、
あの時、あの学校で
オレ達が出会ってなかったら
今頃は何をしていたのだろうか。

初元カノは
今は「出会わなければよかった」や
「あなたと居るとおかしくなる」と言っているが、
あの時は確かに「めちゃくちゃにして」と言っていた。

当時、オレの事が大好きだったのか
オレの前ではずっと笑顔だった。

まだオレはその時、
『恋』というものに気づいていなかった。

自分に別の恋人ができても、
初元カノのアソビアイテを横取りしても、
何も感じなかった。

オレは『今』だから初元カノに
『恋』をしていると自覚している。

オレの運命を全て変えてくれたから
いつの間に初元カノに『恋』をしていたと知った。

だからいくら今、初元カノに嫌われても、
別の恋人ができても、金をかけられても、
急に呼び出されて体だけの相手をされても、
オレは初元カノを『嫌い』になれない。

なんなら自分が既婚していても
初元カノの恋路を応援しつつも
内心では今でも「初元カノと交際したいな」と
思ったりもする。

初元カノも
「あなたで『快楽』を知ってしまったから」と
オレから離れられない。
それに、ここまで心を許した人物が居ないから
ずっとオレを嫌がりながらも依存している。

オレと初元カノは心と体の傷を舐め合って
愛し合って生きてきた。

もう2人で堕ちることを決めたから。
いくら歪んでいるとわかっていても
それをまた『愛』のカタチだと思い込む。

オレ達はチェックアウトをして
ホテルから出ておたがいに「またね」と駅で解散する。

オレは名残惜しくとも帰りの電車に乗り
通り過ぎて離れていく地元と実家を懐かしみ
イヤホンで『ラブストーリーは突然に』を聞きながら当時のことを思い出したりして いつもの日常に帰った。