小学校上がる前の記憶。
母が出掛ける時
裾を掴んで
｢行かないで｣と
お願いすると
おどけて
｢イカあった～｣と
出掛けていく。

月日は流れ
驚くことに
このやり取りは
出掛けの挨拶として
いまだに続いている。
｢行かないでー｣
｢イカあった～｣

(どこにも行かないで)

小学低学年の記憶。
母と遠出した帰り
夕方の通勤ラッシュの
満員電車を降り
母の背中を追って
バス停まで急いだあの日。
あっという間に
見えなくなった背中は
駅発の停留所、長蛇の列の
一番前に並んでた。
…早すぎ。

(君の背中を追って)

好き、嫌い、
好き、嫌い…
よく花びらちぎって
漫画で見かける占いする女子。
もしくは乙女な男子。
実際いるのかな。
靴を飛ばして
明日の天気を占うやつは
見たことあるけどね。

(好き、嫌い、)

梅雨…どこ行った？
暑い、もう夏が来たの？
梅雨時の具合の悪さだけを
置いてった。
今日も暑い。
涙もあっという間に
干からびる。

(雨の香り、涙の跡)

針に糸を通す。
昔から不器用で
糸通しを使わないと
糸を通せない。
銀色のペラペラのやつだ。

ある日
裁縫をしてる母を見ると
オレンジ色の糸通し器具で
ガシャッとボタンを押すと
あら不思議、糸が通ってる
なる品物を使っていた。
ところが
それを借りて私もやってみたが
上手くいかない。
なぜだ…？
結局銀色のペラペラを使っている。

(糸)