旅行で泊まった旅館の翌朝の朝食バイキングには
驚くレベルのお仲間がたまに存在する。
食事の内容がほぼ一致しているのだ。
ただバイキングで会うお仲間はイコール敵である。
同じものを欲するから、微妙に待ったり待たせたり。
かぶる度にお互いうんざりする。
空カップ3つ持ってって
コーンスープをカップ三杯もっていくぜ、へへっ
クルトンましまし~ですら、かぶったこともある。
またお前かって顔をされる。恐らく私もしてるのだろう。
自分がラストを取った時の気まずさったらない。
ここが出会いでなければ何か運命すら感じそうなものである。
ただ、煮えたぎったコーヒーにシリアル用の牛乳を半分入れる
カフェオレ仲間にだけはまだ会ったことないな。
この時だけはホッと出来るひとときだ。
(仲間)
小学生の頃、よく先生が隣の人と手を繋いでと
無責任な命令を出してくることがあった。
小2か3だったかな。私のこと嫌ってる子が
私と手を繋ぐのをヤダヤダ言って
しまいに泣き出したことがあった。
ただ対処法を知っていた私は筆箱から鉛筆を取り出し
お互いに鉛筆の端通しを持って、手を繋いだことにしてもらった。
先生って生き物には、わりと早くから困っていたな。
「そんなひどいこと言わないの!」とか
「何でそんなに嫌なのか言ってごらんなさい」とか。
いや、ひどいのはあんただから。
まわりの人間も調子に乗って、嫌な理由並べ立てるから。
そうそう、この対処法は手のひらが鉛筆の芯で黒くなるんだよな。
削ってある方を持たせるわけにはいかないからね。
今思えば、嫌いな人間の鉛筆を持つこと自体を
拒否られなくて助かったなとは思う。
(手を繋いで)
今日、父方の墓参りに行きました。
超渋滞に巻き込まれ、やっとこさ帰ってこれました。
墓参り帰りにいつも寄ってたラーメン店。
代替わりして人気のなくなったラーメン店がつぶれてました。
今までありがとう、行かなくなってごめんなさい。
そしてお疲れ様でした。
奥の和室、母の鏡台の更に奥。
その部屋の片隅に、何かオレンジ色のような茶色のような
半透明のくすんだフィルムっぽいものが落ちている。
母の化粧品にでも付いてたのかな?
しばらくすると無くなっていたので気にも留めなかった。
それから日も置かずまた部屋の片隅でまたフィルムが落ちている。
前のより小さいのが2つ。なんだあれは。
さすがに気になって拾い上げる。
…タマネギの皮。
そういえば母は最近急に寒くなってモコモコ靴下履いてたな。
台所から連れてきてるに違いない。
ごみ箱に捨てようとしたら既に皮が何枚か入っていた。
いや、連れてこないように気を付けようよ。
中学生の頃、部活を辞めてからほぼ毎日
放課後立ち寄った文房具屋があった。
その店の真ん中にドーンと大きなハンコを売る棚があった。
透明のフタが付いていて、開けるとバカっと音がする。
くるくる回る棚は何となく眺めてるだけで楽しい。
そんなある日ふと気になった。違和感が半端ない。
上下逆さまのハンコが異常に多い。誰かのイタズラだろうか。
いつもたいした買い物もせず寄らせてもらってるお礼に
逆さまハンコを直してあげるか。
意を決し、ハンコ棚の逆さハンコを1つ1つひっくり返した。
他の客の目も気にせず、一心不乱に棚のハンコを直す。
上の方は腕が疲れる。下の方は腰がしんどい。
そしてついにハンコ棚のハンコが全て上下正しく入った。
回しても回しても違和感無し。やった!
妙な達成感がダルくなった腕を腰を癒していく。
満足して家に帰る。何だか久しぶりの気分の良さだった。
そして次の日の放課後、文房具屋に立ち寄りハンコ棚に近寄ると
「御入り用の際は店員に申し付け下さい」との貼り紙。
見ると透明フタは全面鍵が掛かっていた。
気を良くしてた自分が本気で恥ずかしい…