【ハッピーエンド】
裏を返せばそれは、誰かにとってのバッドエンド。
本当の幸せなんて存在しないんだよ。
【見つめられると】
不意に君がこちらを向く。緊張で足が止まる。体が強ばる。
まるで君は、僕にとってのメデューサだ。
【My Hear】
ハートって、色んなイメージを持ってる。
心臓、心、愛────。
こんな脆いものなのに、同じ場所にあるだなんて、あまりにも荷が重すぎる。
【ないものねだり】
私にだって、才能はある。
それでも、あの人の方が上だった。
「隣の芝は青く見える」なんて言うけど、
もう既に持ち合わせているのに強請ってしまうのは、いけないのだろうか。
【好きじゃないのに】
街角ですれ違う、学生服の男の子。彼らが着ているのは学ランだった。無意識にそちらに目線がいき、思わず立ち止まってしまう。そんなことに彼らは気付かない。
──羨ましいな。
タイミング悪くショーウィンドウのガラスに自身の姿が反射する。髪を肩より下に伸ばし、世間では女物として扱われる衣装を身にまとった自分だ。
こんな姿、私じゃない。
でも全ては自分で決めたことだ。女として生きる私が好きな両親のために、私は女として生きる。
「めぐちゃーん!」
待ち合わせしていた友人が私を呼んだ。
「ごめん、遅れて」
「全然!そんなに待ってないよ!」
正直で素直な性格の彼女が私は好きだった。よく友人は自分の鏡写しだ、なんて言うけど、彼女は寧ろ理想だ。
「あ、そうだ」
彼女はカバンの中から1つの箱を渡してきた。周りの話についていけるよう、ブランド物の知識はある。その箱も、某アクセサリー店の物だった。
「誕生日おめでとう!」
「……ありがとう。開けてもいい?」
「うん」
今年は何を送ってくるのだろう。
「──ネックレス?」
「そう!めぐちゃんに似合うと思ったの」
どう?と聞き返す彼女に私は「凄く嬉しいよ」と返した。正直、アクセサリーは苦手だが、彼女のくれる物は何でも嬉しい。
「よかった〜!今日どこ行く?私行きたいお店があるんだ」
「なら、そこにしようか」
その後はとても有意義な時間を過ごした。
家に帰ると疲れがどっと出て、今すぐベッドに倒れたくなる。
一旦荷物を部屋に置くために、自分の部屋を開ける。
彼女から貰ったプレゼントを、部屋の棚に飾る。その横には去年貰ったものや、お揃いで買ったものがある。どれも全て、私は好きじゃない。
好きじゃないもので、どんどん私の部屋も、体も侵食されて行く。
「今更、だよな」
自分の部屋にいると、つい気が抜けて口調が本来のものに戻ってしまう。
「好きじゃないなんて、言えないよ」
私の大好きな彼女の好きな物は、私にとってはただの錘だ。