…が好き。

雨のせいでよく聞こえない。右肩が雨に濡れている。

濡れてない方の肩の隣から発せられた言葉は、

またもパチパチという音に掻き消された。

そろそろ塾行くか、と重い腰をあげる。

玄関の物置からヘルメットと鍵を取り出し、

下の階の駐輪場へと。

ラッキーだ、そんな降ってない。

サドルに腰を降ろし、ゆっくりペダルを漕ぎ始めた。

ところが、しばらくすると雨足が強くなってきた。

最悪だ、そう思いながら太腿にピッタリと張り付いた

制服のズボンを見て、静かに笑った。

グミ、チョコ、ラムネ、挙げていくとキリが無いのも

美しいと感じられる。それらをポケットに仕舞う。

雨に濡れた靴の爪先を見つめながら歩くこの帰り道も

美しいと感じられる。それはいつか乾いてしまう。

なぜ？

どうして？

英語だと全てwhyで片付くこの言葉たちは、

いつも僕に突きつけられる。

思い出したくもないのに、

あの頃を思い出させようとするお題。

書きたくないなぁ。