この時期くらいだろうか?
幼い頃、とてもわくわくした思い出がある。
その日はいきなり、仕事帰りのお父さんが
赤いラベルのペットボトルを買ってきた
いいからこのタグを引っ張ってみろ
私は父の言いなりに、勢いよくタグを引っ張ってみる
くしゅっ、となったラベルは
一瞬にして大きなリボンに変わった
その斬新な仕掛けと
一気に華やかになったパッケージに
私は、乙女心が揺さぶられたのだ
ただ、中身はいつもと同じなのに
いつもより何倍も美味しく感じてしまう
あの幼い頃に感じた感動を
今でも思い出しては、懐かしい気持ちになったりする。
ー時を結ぶリボンー
私が初めて心を込めて書いた手紙は
綺麗な顔で眠っているばあちゃんと
一緒に灰になった
病気をしていたから
あまり骨が残らなかったんだって
せっかくなら、もっと良いこと書けばよかったな
って今なら思うけど
いきなり親しい人に手紙を書くなんて、と
なんだか気恥ずかしかったのを覚えているよ
入院を繰り返していたばあちゃんは
私が、似顔絵を書いたら
それを看護師さんに自慢してまわったんだって
別にいいけどさ、、、
ばあちゃん
あの世でいっぱい知り合い作るのはいいけど
頼むから手紙の内容だけは
言いふらしたりしないでくれよ
あと、早くお返事ちょうだいね。
ー秘密の手紙ー
「帰ってきたら必ず見せろって言ったでしょ」
朝、目を覚ますとまず耳に飛んでくるのは
いつも連絡帳を出さない長男に怒鳴る母親の声
「忘れ物が多くてお母さんも学校に呼ばれたんだよ
ちゃんとしてって何回言ったらわかるの!」
チン、と昨夜の白米を温め終わった電子レンジ
いただきます、をする次女
三女のランドセルについた熊よけの鈴音
テレビから流れるのは、バスタブ妖精の心地よい歌声
それをじーっと観ている次男
「あ、待って。そこに縛ってあるゴミ持ってって」
玄関で靴を履きながら、うん と返事をする
一つの指定袋にパンパンに詰められているもんだから
中学に入ったばかりの私にはかなり重く感じた
毎回私と次女は、ゴミ出し係だった。
周りからは思ったより姉弟が多いと言われてきて
そこの長女だというと、何も知らない大人達からは
"しっかりしている子だ"とよく褒められたりしていたので
なんとなくそれを誇りに思っていた時期もあったのだが。
成長期真っ只中の、中学2年の頃
全てが耳障りになった。
母親の怒鳴り声がキンキンと頭に響くようになって
食器のカチャンとなる音に、過剰に反応したり
大好きだった音楽も、番組も
リビングからの笑い声も
聴こえるだけで猛烈な嫌悪感が迫ってくる。
これはおかしい、と思った
いわゆる反抗期ってやつなのか。
私にもとうとう来てしまったのか。
前触れなんてなかった、というか気がつかなかった
いつの間にか、賑やかで楽しいと思っていた家に
帰るのが億劫になったのである。
段々会話にも乗り気じゃなくなり
いつも不機嫌そうにするようになったせいか
父親は、私に夜な夜な説教するようになった
酒も、段々量が増えていった
家族って一人がしんどくなると
結構連鎖していくもんなんだな、と感じて
頑張ってみるのだけど
楽しくいようと頑張るってのが
なんか馬鹿馬鹿しく思えて
それがなんだか悲しくって
意味も分からず泣いたりして、、。
とにかくあらゆる音に耳を塞ぎたかった時期
お題が難しくってどうしようかと考えてたら
そんなのもあったなぁと思い出した
私はもう少ししっかりしなきゃと思っていたんだけど
のびのびと、反抗期やらせてもらえたんだ。
感謝しないといけないね。
連絡帳を出さず毎朝のように怒られていた長男は
中学に入ってから急に勉強が楽しいと言い出して、
テストの点数を自慢気に母に話すようになった。
お母さん、もういい加減怒鳴らなくて済むよ
「ほんと、怒るってかなり体力使うんだから。」
昔より目尻にシワの増えた母がぽろりと呟いた。
叱る時に振るっていたラップの芯を、
今はちゃんとゴミ箱に捨てているようだ。
皆成長してきて和やかになった我が家
たまにはうるさく騒ぐ日があってもいいよ、
別にあの頃が恋しいわけじゃないけどね。
ー失われた響きー