1枚ページをめくるごとに、本の世界に入り込んでいく。
次の台詞を読みたくて、次の展開を知りたくて。

1枚ページをめくるごとに、残りのページが少なくなっていくのを感じて、少し名残惜しくもあるけれど。
今はただ、目の前の世界に入り込む事しか考えられない。

今日から9月。
つまり、今日から秋。
とは言っても、相変わらず汗が滲む。
そんな汗を拭きながら、今日から秋なんだと自分に言い聞かせていると、頭の中で引っかかる。
今年の夏、重大な忘れ物をしてしまっていたことに気づいた。
その忘れ物を思い浮かべ、一瞬ひやりとする。
探そう、夏の最後の忘れ物を。

これを忘れたままでは秋は始まらないな、
彩られた氷の山を見て、そう感じる。
今年の夏に食べ損ねたかき氷を、口一杯に頬張った。

今日で8月が終わり、明日から9月が始まる。

明日から秋ということは、この暑さとおさらばできるのか。
いやいや、この太陽がそんなに物分かりが良いわけがない。
年々性格が悪くなっている太陽は、どうせ明日も何食わぬ顔で照り続けるに違いない。

8月31日、午後5時、沈んでいく太陽に勝ち逃げされる。

ひとりでいると静かすぎるから、
大勢でいると騒がしすぎるから、
ただ目の前に誰かがいてくれたら、それでいい。

この世界中で、二人きりを望んでいるわけじゃない。
静かな時も、騒がしい時も、
ふたりで生きていければ、それでいい。

頭の中を空にする。
憂鬱な考え事を隅に置く。
そんな時の心の中の風景は、欲しい答えを与えてくれるとは限らないけど、一息つく安らぎを与えてくれる。
隅に置いた考え事も、そんな風景の一部だと思ったら、ほんの少しだけ可愛く見えてくる。