【春爛漫】
今年も春がやって来たことは知っている。
でも、春が来たんだ、という実感はあまりない。
一体なぜだろうか。
春が来ることを当たり前だと思っているから?
春だとか、夏だとか、秋や冬だとか、季節の流れなんて正直どうでもいいと感じている節があるから?
そんなことを考えながら、帰路へとついていた。
視線を正面に向けたまま、自転車をこぐ。
心地よい風を感じて、ふと地面の方に目をやった。
たくさんの散り散りになった、ピンク色の落ち葉。
思わず顔を上げた瞬間、初めて私は、“春”が来たことを実感できたような気がした。
【誰よりも、ずっと】
私たちには、誰よりも、よく見えているものがあれば、見えていないものもある。誰よりも、よく理解しているものがあれば、あまり理解できていないものもある。
いわゆる「ジョハリの窓」というらしい。
自分の良いところも、悪いところも。
誰かの良いところも、悪いところも。
知りすぎていたり、知らなすぎることがある。
無理に解ってくれとは言わない。
無理に解らないでくれとも言わない。
ただ……もしかしたら、まだ開けていない“窓”の先に、誰よりも、ずっと青い空が広がっているかもしれない。
【これからも、ずっと】
今、子どもの私でも。
いつか、大人の私になるんだよね。
忘れたくない子ども心を。
歳を経ても、内面くらいは自分らしくありたい。
思うことは、それだけ。
【沈む夕日】
夕焼けこやけの茜空は、朝や昼に見る青空とは違う。
あらゆる人々や建物が逆光で暗くなり、バックには、赤々と揺らめく太陽がそびえ立つ。
やがて、夕日が沈み、空はピンクから紺色へと変わる。
だんだんと夜闇に溶け込んでいく空のグラデーション。
太陽からバトンを渡された月が淡く輝き出す。
この一連の流れを見ることが、私は好きだ。
【君の目を見つめると】
君の目を見つめると、いつも私と目が合うんだ。
だって、そうよね。君の目を覗き込むために、わざわざ私が君の正面に移動しているから。
必然的に、君は私のことを見つめることになる。
でも、君は迷惑だって言ったことなんか一つもない。
君の黒い瞳孔は、私が目をそらさない限り、私のことを映し続ける。
それでいい。それでいいのよね?
私は君を見つめていたいし、君も私を見つめていたい。
相思相愛とは、この事だ。そのはずだよね?
なぜ私を見ても、君は何も喋ってくれないのだろう。
もしかして……いや、やっぱり最初から。
私のことなんか、眼中にないんだよね?