黒咲アキラ

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4/5/2024, 9:36:35 AM

それでいい

じゃまなひとがきた

こんやはせかいいちの
ぴざというやつをつくらなければなりません

とてもこんわくしています

なぜならば
まえにつくったぴざというやつは
おそろしくおいしかったから

きょうのはあんなものじゃない
あのよる
ままがみたことのないおけしょうをして
めざましどけいがなるころにかえってきた
あのときみたいにすごい

ともくん?ともくん?ほら

うん

うさぎがピザをもってきた...

ウサギがおとどけするピザなんて
かわいいでしょ

目覚まし時計が鳴った

──とんだ邪魔が入ったな

そう、今夜は世界一のピザを
つくらなけりゃならないんだ

超、困惑気味さ

なぜかって?あの夜
作ったピザはそれはそれは香り深くて
天にも昇る美味さだった

今日のはあんなもんじゃねーぜ

あの夜
お袋がおしろいを塗りたくり
鼻が曲がりそうな
安物のコロンのにおいで
朝帰りをキメたあの朝みてーに...

知さん?知さん?これ

おう

うさぎがピザを持ってきた...

ウサギがおとどけするピザなんて
かわいいだろ

目覚まし時計が鳴った

──邪魔がはいったわね

そう、今日は世界一の
ピッツァを作らなきゃならないの!

でもちょっと困ってるの

なぜなら
あの日あの夜作ったピッツァ…..

あの夜..作った...

あの...あ...

電池の切れそうな目覚まし時計の音と共に
映像が乱れ
視界は漆黒の闇に呑まれた

知子はヘッドディスプレイを
頭からむしり取った

会えなくなった息子の友哉が8人目
乱暴な元夫、知則が9人目
そして私が10人目

11人目...11人目...11人目

知子は赤いルージュを引き、コロンをつけた

短くなったバージニアスリムを灰皿に押し付けたとき
インターフォンが鳴った

知子は直感で、別れた知則がまた金をせびりにきたのだと思った

そろりとモニターを見ると
ストライプのジャンパーを着た
ピザ屋が大きな袋をもって立っていた

頭はウサギだった

知子はふたたびヘッドディスプレイを装着し
ゆっくりとドアを開けた

「おかえりー」

友哉が玄関まで走ってきた

ともくん?ともくん?ほら

うん

うさぎがぴざをもってきた...

ウサギがおとどけするピザなんて
かわいいでしょ

ちいさなヘッドディスプレイをつけた
友哉が笑っていた

「ともくん、誰か来たのー?」
奥から女の声がした

わたしの声だった

じゃまなひとがきた

こんやはせかいいちの
ぴざというやつをつくらなければなりません

とてもこんわくしています

3/16/2024, 3:46:23 AM

星が溢れる

星というのは嘘の事だ

自分を着飾るための嘘
自分を守るための嘘
他人を落とすための嘘が
世界を乱反射させている

涙が溢れる

星は神がついた嘘だったのかもしれない