今回のテーマ「Love you」
そう言えたらどれだけいいだろう、と思う。
世間的にも関係的にも、簡単には成就しないと分かっているからこそ、本人には言えていない。
貴方を愛してる。
大切に思う。
でもそれも、恋する相手だと知られては、続かない気がして悲しくなった。
ひとり、心の中で何度も唱える。
はやくこんな片思いは、やめたい。けれど嫌いになれるわけもない。…忘れる努力は、難しい。
せめて貴方に大切な人ができるまで、傍で想ってることを許して欲しい。今までできなかった分まで、恋をして、どうか幸せになってくれ。
お前は優しいやつだから。
「 」
今回のテーマ「愛を注いで」
何も知らない俺に、先に愛を注いでくれたのは君だった。
自分の思っていた常識と、世界の常識が違った時、それでも困らなかった。必要ないと思っていた。
けれど君は俺に実直で、こっぴどく世話を焼いて、初めての「友達」になった。
勉強は今までと変わらずやったけど、周りから見て出来すぎていた体育は程よい成績に留めたし、クラスメイトとも話すようになった。部活にも入った。次第に関わる人間が増えていく俺に、君は穏やかに「いい傾向ですね」と微笑んだ。額縁の中の聖母のように。
そもそも君は世話焼きだと知ったから、君にとってこんなことは、特別でも何でも無かったのかもしれない。
けれど、これが愛でなければなんだったのか。
恋心より欲望より先に、君の愛を知れてよかった。向き合い続けてくれたのは、注がれたのは、紛れもなく君の愛だった。
だから今度は俺がかえすよ。
君が自信を取り戻して、いつも笑顔でいられるように、
ふたりのおわりまで、愛を注いで。
今回のテーマ「何でもないフリ」
俺の意中の人はモテるのに、鈍感だ。
恋バナとかそーゆー本とか好きなくせに、何でか自分への好意には気づかないらしい。
これは長期戦になるなと覚悟して、ゆっくり事を進めているけれど、たまにどうしようもなく欲が顔を出す。
「どうしたんです?」
書類から目を上げ、こちらを伺う瞳が訝しげでも、こんなに美しい。心配そうにひそめられた眉もかわいい。ドキドキしてきた心臓を落ち着かせる。抱きしめたいけど、まだダメだ。鈍感な君が、俺の気持ちに気付いてくれるまで待たないと。びっくりさせてしまう。
「んーん、大丈夫」
本当は奪いたい。
君のキレイなところ全部そのままでいて欲しい。
俺に振り向いてくれるまで、他の人には染まらないで。
でもできるだけ誠実でいたいから、
今日も何でもないフリをした。
今回のテーマ「眠れないほど」
最近なかなか寝付けない。
やっと眠れても、途中覚醒してしまう。
頭を悩ますのはアイツのことだ。惜しげも無く好意を向けてくる、優しい男。ああいうのがイケメンだのスパダリだの言ってモテるんだろう。羨ましいやつめ。
しかし相手が私なのはどうなのか。今もお前の隣は私だとは思っている。しかしそれは親友だったら、という話だ。パートナーなら、お前にはもっと相応しい人がいるんじゃないか?その考えはいつまで経っても抜けなかった。
1人では解決しない想いがぐるぐると胸にのしかかる。
私だってお前が好きだよ。
けれど縛りたくなんてない。
貴方の愛おしいものを見る目、穏やかな声、私の名前を呼ぶ、すべてが甘く脳を包んでいく。
あぁ私だって、眠れないほど、貴方が恋しい。
今回のテーマ「距離」
惹かれていると自覚した。想ってしまった。
長年の親友なのに。過去も目標も共有した、大切な仲なのに。信頼の厚さをこんなにも悔やむことがあるなんて、思わなかった。貴方を裏切るのが怖かった。
なんでもないように過ごそう。
変わらずに接してくる貴方を止めるのは、不自然だから。
触れられて嬉しいとか、もっと一緒にいたいとか、思わず顔がにやけそうになっても、ちゃんと平然としていよう。そういうのは私、得意なはずでしょう?
「ねぇ、なんか最近へんじゃない?」
「何がです?」
「何かとかじゃなくて…違和感があるというか…」
こちらをのぞきこんでくる、端正な顔立ちが恨めしい。
くそ、かっこいいな。見つめるな。好きだから。
「はぁ、貴方が分からないんじゃ私も分かりませんけど…?」
「んー」
気をつけてるつもりなのに、もうバレたかな。
もっとうまく隠さなきゃ、貴方に勘づかれてしまう。
どんな風に一緒にいたっけ?相づちのタイミングは?歩く時の速さは?考えろ、考えろ、私、できるから。
あぁ、あれだけ気楽に隣にいたのに。
今ではこんなにも、貴方との距離が難しい。