誰かとコミュニケーションとりたくて
いざ始まるとどう反応して返したらいいか分からなくて
考えて考えてやっと編み出した言葉を送る
送った言葉への返事は待ち遠しいけれど
いざ返事の返事をする段になるとまた困ってしまう
言葉を編み出す楽しくも苦しいあの時間が
またやってきてしまうから
送信するまで勇気を振り絞るあの時間が
またやってきてしまうから
未読のままの開けられないLINEが増えていく
*開けないLINE**
人間は完全な生き物ではないので
私も君も皆んな不完全同士
だから補い合って助け合って生きている
それでもどうしても完全を求めてしまうけど
不完全な私自身を嫌わずに生きていきたい
*不完全な僕**
よく空の写真を撮っていた
澄んだ青に浮かぶ白い雲が爽やかで
そのコントラストに堪らなく惹かれてシャッターを切った
若さをだいぶ使い果たした頃から
夕焼け空に向かってシャッターを切るようになった
茜色から紺碧へと向かうグラデーションが壮大に美しく
そんな空色を反映した雲の影と
薄暗闇に浮かぶ家々の温かい灯火がドラマチックで
朝焼けも夜空も素晴らしいけれど
今に至るまで心惹かれるのはやはり黄昏時の夕空だ
なんともいえないノスタルジックな気持ちを起こさせる
何かを投影しているとするならば人生か
子ども時代を朝焼け空
思春期は澄んだ青空に様々な天候をもたらす
そして働き盛りから人生の中盤を過ぎた頃が夕空だ
きっとその後は静謐な夜空で締めくくるのだろう
今も時折、夕空の写真を撮る
撮り始めた頃よりは暗いグラデーションが多くなった
全く同じ夕空がないのと同じで日々の私も変わっていく
空を眺めるのと同じように自分と向き合って
いつかくる静謐な夜空の時間を迎えたい
*空模様**
心が凪いでいる。
身から出た錆で何もかもを失ったが、身一つとなり気が楽にもなった。これ以上失うものがあるとすれば、目には見えない、何物にも代え難いものであろう。
家も家財も家族も友も仕事も何もかも手放して、海辺を歩く私を、空を飛ぶ鳥達はどう思うだろう。この人間も、この道を往く同志と同じように儚くなるに違いないと予想しているのであろうか。
そのような勇気もない私だ。
海辺から砂浜へと入り、夜の海へ足を浸したものの、夏の盛りの生温い海風と大して冷たくもない水温にその気を削がれてしまった。立ち止まっているうちに誰かが駆けつけて声をかけてくれるということもなく、あくまでも波打つ海水と海風とに打たれ続けて、結局は砂浜へと戻り腰を下ろしているのである。
私の命がこの世から儚くなったとして、日々は何も変わらず、朝日が昇り、人々の営みは繰り返され、日が落ちる。
居ても居なくても変わらないのであれば、意気地なしが世界の片隅でひっそりと生きながらえたくらいで何も変わらないだろう。
濡れた足が乾き、纏わりついた砂が剥がれていく。
私の中で滞った澱のような暗いものは、砂のように剥がれはしないが、凪いだ心にやわらかく抱いて、もう暫くはこの生にしがみついてみようかと思う。
*夜の海**
好きなものを好きと言えること
嫌いなものを嫌いだと認識できること
大切な人たちの目をまっすぐ見られること
時に逃げる選択をできること
*心の健康**