雪の降る静かな夜
玄関のチャイムが
鳴ったゆっくりと
インターホン越し
君の声が聞こえた
姿は見えなかった
急用ができたかと
慌てて扉を開けた
メリークリスマス
サンタ帽を被って
ヒゲも生えてたよ
リボンをむすんだ
クッキーは手作り
君のサプライズは
唯一大好きだった
『突然の君の訪問。』
大切にしている箱の中は
誰かに見せなくてもいい
知っているのわたしの瞳
曇天の空色は澄んでいる
泣いているのわたしの瞳
ナナカマドが薄紅をさす
風がもうすぐ連れてくる
雨が上がる静けさを空に
風がもうすぐ連れてくる
今はただ此処にいたいの
何もかも忘れていたいの
『雨に佇む』
グラスの氷が
溶けて消えた
仕草のひとつ
優しい嘘なら
私は要らない
隣に居たなら
知らないまま
さようならは
雨の日がいい
あのカフェで
窓際の特等席
『向かい合わせ』
てんしる、ちしる
われしる、ししる
だれかがみている
どこかでみている
きのうのわたしも
きょうのわたしも
いつもといかける
やさしくありたい
じぶんにまわりに
ただしくありたい
じぶんのこころに
おてんとうさまを
みあげてごらんよ
まぶしくあかるい
てんしる、ちしる
われしる、ししる
『やるせない気持ち』
洋服の裾の綻び
裁縫箱を出して
針に糸を通して
ちくちくと縫う
苦手だけど縫う
縫目は美しくね
表に出ないよう
祖母の針仕事は
優しくて丁寧で
しつけ糸の白の
大きな三つ編み
するりと一本を
取り出していた
私もやりたくて
何度も絡まった
子供だからかな
大人になった今
苦手だけど縫う
祖母の大きな手
偉大な魔法使い
『裏返し』