結び目が解けていた
気がつかないでいた
街が色を失っていた
遠く雨が降っていた
猫のように気まぐれ
雨に濡れてないかい
月夜に抱かれたまま
見えない星を探した
五十鈴川のせせらぎ
心音が聞こえますか
今を感じていますか
私に還る所はいつも
あなたの懐のそばに
亜麻の花が揺れてる
限りなく透明な青色
涼しげな夏空のよう
大地と繋がっている
地植えの花は逞しい
鉢植えの花は優しく
水切れしないように
暑いとか雨が嫌とか
天に文句は言わない
友人を思い出した朝
今年の夏は暑いかな
ふと私が思ったのは
文句ではないですよ
亜麻の花が笑ってる
あの人がくれた夏色
『繊細な花』
数え年、
生まれた時を一歳とする
還暦のお祝いは満年齢で
長寿のお祝いは数え年で
大切なひとが生きている
健やかに穏やかに幸せに
この世の中に溢れている
言葉だけでは足りなくて
私はあなたの声を聞く度
幸せを願っているのです
喜びを共有できることを
嬉しく思っているのです
『1年後』
わたしは左利きです
お箸を持つ手は右に
文字を書く手は右に
普段は寡黙な父親が
直すように注意して
大人になったのです
使途に応じて右か左
林檎を剥く時は右で
野菜を刻む時は左で
球を投げる時は左で
打席に立つ時は右で
子供の頃使っていた
真っ赤なグローブは
お下がりではなくて
私だけの宝物でした
懐かしい思い出です
『子供の頃は』
まわるまわる
地球がまわる
こちらは朝で
あちらは夜で
眠る所があり
食べ物があり
衣服に恵まれ
争いを知らず
穏やかな世界
蛇口から水色
清浄なる空気
有難い有難い
目覚めた朝に
『日常』