【バカみたい】
お洋服にこだわって
お化粧を頑張って
アクセサリーをたくさん付けて
髪型もばっちり決めて
そんな私のことを
みんな綺麗だと言ってくれる
だけど
私を好きだと言ってくれる人は誰もいない
みんなに気を遣っているし
みんなのためにと努力している
自分の性格はそんなに悪くないと思う
人間関係も上手くいっている
それでも
私を選んでくれる人はいない
私を褒めてくれる男の人には彼女がいて
私を羨ましいという女の人には彼氏がいて
けれど私は一人ぼっち
家に帰って
綺麗な服からくたびれた部屋着に着替えて
アクセサリーを外して仕舞い
お化粧を落として素朴な顔に戻って
セットした髪を崩して適当に一纏めにして
ああ
私は毎日
何のために頑張っているんだろう
本当にバカみたい
【二人ぼっち】
私たちのことは
双方の両親が反対している
それでも一緒になりたくて
二人で遠い国に行く
人の少ない見知らぬ街に二人ぼっち
誰も祝福してはくれないけれど
やはり私はあなたと居たいのです
たった二人で不安だらけ
それでも
その先に幸せがあると信じて
【夢が醒める前に】
まるで絵本に出てくる王子様が
そのまま目の前に現れたみたいに
綺麗な瞳と髪を持った端正な顔立ちの男の子が
私を見つめている
そして私に「愛しています」と
甘い声で囁くのだ
この男の子に会うのはこれで三度目
いつも気付いた時にはすぐ目の前にいる
やがて私も
これが夢だと思い出してしまう
そしてこの男の子も
夢の中の住人でしかないということも
「あなただけをずっと愛しています」
男の子はまたそう言って
私を愛おしそうに見つめた
一度目は見つめ合うだけ
二度目は抱きしめてくれた
三度目の今日は
美しい顔がそっと近付いてくる
ああ
この夢が醒める前に
幻のような甘美な口付けを
【胸が高鳴る】
朝、いつも同じ電車で見かける男の人がいるの
高校生の私より少しだけ年上に見えて
毎回私服だから大学生くらいかな
見かけても最初のころは何も思わなかった
ああ、いつもの人だなって思うくらい
だけどその人
いつも誰かに席を譲ってるんだ
それでね
ある時席を譲ってもらったおばあさんが
「ありがとう」って言ったら
その男の人が恥ずかしそうに笑って首を横に振ったの
なんだかその笑顔を見た瞬間
胸が高鳴った、っていうか……
それからは
その人を見かけると毎回ドキドキするようになっちゃって
あの人のこと何にも知らないのに
自分って単純で馬鹿だな、って
学校でもぼーっと考えたりしちゃってさ
また明日も会えるかな
今、この世で
私の胸を高鳴らせる唯一の人に
【不条理】
普通はさ、待ち合わせに遅刻したら「ごめんなさい」だよね?
自分が落とした小銭を拾ってもらったら「ありがとう」だし。
どっちも言えないってどうなの?しかもいい大人が。
ごめんなさいもありがとうもまともに言えないような人は、いくら顔がカッコ良かろうが、物腰が柔らかかろうが、仕事で稼いでいようが、こっちから願い下げ。他の部分が優れていればいいってもんじゃない。
ま、そいつは顔もカッコ良くなかったし、性格悪いのが滲み出てたし、仕事で稼いでるわけでもなかったけど。
人の振り見て我が振り直せ。自分は最低限、ごめんなさいとありがとうはちゃんと言える人でいよう。