【とりとめもない話】
別にさあ、僕はその子に興味なかったんだよね。
マッチングアプリで知り合った子なんだけど、一回デートしたらそれで終わりにしたかったの。
ただ一緒にお茶して、カラオケ行って、ご飯食べて、ホテル行って、あとは連絡なんて取らなくて良かったわけ。
それなのにお茶してカラオケ行って、ご飯食べたと思ったら、僕がホテル誘ってるのに断って帰っちゃってさ。
けど、その後も毎日連絡してくるんだよ。何考えてるのか全く分かんないわ。
それからも二、三回会ったんだけど、本当顔がタイプじゃないし、ホテルに誘ってるのにノリ悪いっていうか……。
しかもその子、話がつまんないんだよね。所謂とりとめもない話を毎回してくるの。
この間なんてね、コンビニで買ったチョコレートケーキが美味しかったって言うんだよ。その後に何かあったのかなと思って聞いてたらさ、ただそれだけなんだよ。
美味しくて満足した、ってことを僕に伝えたかっただけらしいんだ。黙ってじっくり聞いてたのに、時間の無駄だったよ。嫌になるよね。
その次に会った時はね。今朝、赤い服と青い服、どっちを着るかで迷ってたんだー、なんて言ってきたの。それで、その子は赤い服を着てたんだけど、この服で変じゃなかったかなーって聞いてきたんだ。
そんなこと言われても答えようないでしょ。僕はその青い服すら見てないしさ。本当、つまんないし頭の悪い子だよ。
……え、何? 帰るの?
他の女の子の悪口聞かされて不愉快?
僕の話の方がつまらない、だって?
ちょ、ちょっと! 僕とデートしたいって子はいっぱい居るんだからね!? この僕から誘ってデートしてるのに、もう帰るって正気!?
……あーあ。暇になっちゃったな。
仕方ないからあの子に電話して、クソつまんない話でも聞いてやるか。
……繋がらない。え、嘘……もしかして拒否された?
まさかあの女、この僕を着信拒否したわけ? はあ?
ふざけんなよ! こっちは面倒でも付き合ってやってたのに……あれ……僕、なんで涙出てきてんだよ……クソッ!
【風邪】
どうやら風邪を引いたみたいでボーッとしていたら、
遠くにいた君が駆け寄ってきて
「体調悪そうだけど、大丈夫?」
って心配してくれた。
風邪は辛いけど、その優しさが嬉しかったんだ。
みんなから人気のある君が、
地味な私のことを心配してくれるだなんて
思ってなかったから。
元気になったら、
今度は私から話しかけてみようかな。
【雪を待つ】
今年も雪を待ってる
空に還ったあなたが
戻ってくる気がするから
辺り一面真っ白で
寒い日の朝にお別れしたのは
今から十三年前
哀しみを乗り越えて
ようやく笑えるようになって
白い雪もあなたのカケラのような気がしてきて
降るのが待ち遠しくなった
だから今年も
雪が降るのを待ってるよ
会えないあなたを待ってるよ
【イルミネーション】
去年の今頃は、イルミネーションを見るのを楽しみにしていた
隣にあなたが居たから
そしてクリスマス、きらきらした綺麗な景色をあなたと見て
幸せな気持ちでいっぱいだった
だけど今年は一人きり
少しずつ飾り付けられ始めた街を見て
そろそろイルミネーションの輝く季節なのだと思う
綺麗できらきらしていて、隣にあなたが居て幸せだったのは
もう過去の出来事になってしまった
仕事の帰り道
駅で輝くイルミネーションを見ても
物悲しく寂しいものにしか感じなくなった
楽しかった思い出が蘇って
時間は巻き戻らないのだと改めて思って
どうにもならないのが苦しくて
あの光も過去も見たくないから
イルミネーションに背を向けて
家に向かって駆け出す
小さな優しい光たちも
今の私の心には鋭い棘のように刺さる
その光をまた笑って見られる日まで
さようなら
【愛を注いで】
もっと、抱きしめてほしいなあ
もっと、ごはんが食べたいなあ
もっと、遊んでほしいなあ
もっと、いっしょにいたいなあ
もっと、なでなでしてほしいなあ
ね、ご主人様
ボクにいっぱい愛を注いでね
毎日愛してくれてありがとう
だけど、まだまだ足りないんだ
ボクもご主人様を愛するから
もっともっと
愛をちょうだい
約束だよ!