鏡の中の自分はいつも笑ってる
鏡の中の私は私を愛しているようだ
私はいつになっても愛せない
これは…………
目が覚めると私は割れた鏡の上で寝ていた
鏡の中の笑った自分は私を嘲笑うように飛び出してきた
始まりはいつも対抗心
私だってできる
私の方が上手くやれる
私が私が私が私が私が
そんなことばかりやっているから
すぐ世の中に疲れる
息抜きしよう?
君は唯一無二
君しかいないんだから
他の子と競っても君の魅力は見えてこない
他の子と違うことをしよう?
君の魅力を表現できる
君はできるから
信じて
これから入学式だというのに
どうも緊張の2文字が出てこない
人生に飽きているからだろうか
ドラマのような桜は咲かず
曲がり角で顔の整った男とぶつかることも無く
ただただ私の嫌いな母がはしゃいでいるだけだった
ひらり
え?
さくら?
そんなはずないか、、咲いてもいないのに
しかし今たしかに1枚のさくらの花弁が横切った
今のは何だったんだろう
見つけたい、新しい生活の中で
知りたい、この先の真っ暗な人生で
光が見えた
ほんのりと小さな光が
神様からの最後のチャンス
秋晴れの予報が流れている
気分はまだ夏バテのような虚無感に襲われているのに
予報では呑気に告げている
秋晴れって何?
父に聞いてもこっちを見ない
秋晴れってどんな晴れ?
母に聞いてもこっちを見ない
お前は秋晴れ知ってるか?
ポチに聞いてもこっちを見ない
【2022年8月29日 K県女子高生 溺死】
ニュースで流れたひとつのニュース
あぁ、私だ
私の中学校の卒業写真が表示される
あんなブサイクの写真載せるなんて恥ずかしい
あぁ、私死んだんだ
去年の虚無感に
殺された
忘れられない夏祭り
私は衣を纏ったのに
君はいつもと同じ布
私は手を伸ばしたのに
君は赤い富士を指す
君との夏はこれだけだったね
あの日を忘れられる日は
来ないのでしょうか
せめてかぐやの見送りを
-かぐやと夏 すれ違う恋路-