きみと言い争った帰り道
もうすぐ雨雲がやってくるから
明日までは会えないから

代わりに空が泣いてくれる
この痛む心をそっと
やさしさに浸してくれる

土の匂いでいっぱいの道を
また笑いながら走り回って
それを彼方から見下ろして
お天道様も微笑みますように


雨の香り、涙の跡 / ねゆ

細い糸の上を歩くように
一歩　一歩　慎重に

細い糸にそっと触れるように
一撫で　一撫で　心地よく

細い糸で声を紡ぐように
一言　一言　あたたかく

細い糸でできたこの命をあなたと
一日　一日　撚り合わせてゆきます


糸 / ねゆ

この丘に座って
月と太陽の鬼ごっこを
いつまでもいつまでも

きっと届かないのに
いや届かないからこそ
相手の背中を追って
いつまでもいつまでも



届かないのに / ねゆ

ここはかつて海だった
ここはやがて森だった
ここはいつか道だった
ここはきっと街だった
ここはいずれ砂だろう

みんなが忘れてしまっても
この大地が覚えている
果てしない時間を記憶して
見えない地図を描いている


記憶の地図 / ねゆ

七色の水を汲みあげて
こぼさないように
冷まさないように
わたしという器に入るまで
その手の中の水は
大切に守られている
小さな小さな海の味


マグカップ / ねゆ