お題【一年後】
「来年にはどうなってると思う」
「…どうかされましたか?」
彼女は突然私に問う。最近ぼーっとしてると思ったらまた妙なことを考えてるらしい。聞いてみても何も返ってはこない。
「そうですね、何も変わらないんじゃないですか?」
「そうだね、私もそう願いたいよ」
まるで何が起こるかわかっているかのように話す。でも彼女には未来を視る能力などない。寿命を犠牲に視る方法はあるが、その物も今はもう存在しない。
「変なこと聞いて悪いな、ちょっと出かけてくるよ。」
「わ、分かりました。気をつけてくださいね」
「あぁ。」
お題【君と出逢って、】
「ねぇ、」
「何、今忙しいんだけど」
資料を眺めている彼女に僕は話しかける。彼女は今、人外かもしれない人間がピックアップされた個人情報の紙を見ている。知り合いがいたらすぐに飛んで、忠告しに行くのだろうなと僕は思った。
「……ふぅ、顔覚えた。あとで行こっか」
どうやら知り合いはいなかったようだ。
「それでさっきの何?」
「んー、あぁいや。あの日から忙しいけど楽しい日々過ごせてるなぁと思って」
「あーそう、私は後悔してるよ。巻き込んでごめんね」
彼女は申し訳なさそうな顔すらしない、真顔でそう答えた。ただ後悔はしているというのは本当だろう。僕は君と出逢って、良かったと思っているよ。
お題【ないものねだり】
「兄さん今日もがんばってね!」
「おう行ってくる!」
兄さんは警察官だ。組織犯罪対策部、組織的な犯罪に関与する犯人を追う俺の憧れの兄さん。今日も家から見送った。兄さんの背中はとても頼もしく、大きく見えた。見えていた。
「兄さん、」
「どうした?」
「……その、左腕ありがとう」
「どういたしまして、俺は命が喜んでくれるなら何だっていいよ。」
お題【不条理】
「…はぁ」
「どうかされましたか?」
「なにもないよ、」
私は空を見上げ、ため息を着く。隣にいた彼女が心配してくるが、流す。
「そろそろ外に出るよ」
「分かりました」
私は外に出た。誰もいない静かな町。ここは魔女区域と呼ばれ、一般人が入れないように隔離しているところだ。私の守ってきた町だったのに。
お題【お金より大事なもの】
「…燃やしてんの?」
「だってもういらないでしょ」
「法に触れてるけど……、まぁ人権ないから関係ないか。」
彼女は今紙幣を燃やしている。タバコを吸うために持っているライターでジリジリと焼いている。
「そんなことよりみんなは?」
「上に行ったよ、」
「君もさっさと上に行って、無事に着いたら連絡して」
彼女は紙幣を持った手の小指で上を指す。上には魚が泳いでいる。水面ははるか空だ。太陽が出ているため、ゆらゆらと流れが見える。