8/16/2023, 2:15:25 AM
「いいかい夜海に行ったら駄目だからね」
どうしてと聴いても、彼は困ったように笑って私の肩をゆっくり擦るだけだった。私は彼の顔を見なかった。月の光にキラキラと深い輝きを持った遠く小さな海を窓から見つめ、空を蹴るような虚無感と壮大な寂しさに包まれて、体を捩って彼の腕をこばんだ。
その時の彼の顔が10年たった今でも思い出せない。