『見ないふり』
思い描いたキスは　ジョイディビジョン風味　触れてトランスポーズ　ダルトーンの夢を見る　小説は気分じゃない　無機質な本が読みたいと君は言う　僕の頭の中でとあるラブソングが再生される　そのことは内緒にしておくよ　とりあえず今は

　　　　　　　『タートルトーク』
風のようなあのこ　きれいに揺れるフリル　あの香りは多分ミントグリーン　とてもじゃないけど　追いつけないよ　毎日が急な坂道なんだ　岩間でひと息ついている　昔お坊さんが巡礼した場所　夏の手前の木々を揺らす　なだらかな風がいま吹いた

　　　　　　　　　『バス停』
バス停で待つ奇跡　こんな退屈　魚に喰わしたい
白旗あげて　頬こけて　ここまでわたしは堕ちている
当たり前のしあわせが　バスを追い越し　目線の先へ

　　　　　　　　『瞬間移動』
あの日の瞬間移動は泥酔してつまびくギターのようにおぼろげで　それができたどうかも怪しいのだ　確かなのは　気持ちだけ移動した　気持ちだけ砂漠を超えて　大海を渡った　遠くに行きたいわたしのイメージだけが移動した

　　　　　　　『距離は関係ない』
ブリキのロボット　隠れてみる星　鹿の群れ　距離は関係ない　何処ぞの廃墟　悩みの種蒔き　白い腕
距離は関係ない　どんなにどんなに離れていても