『こんな夜はヴァージニアウルフを』
訳あって裸の夜　獣はいやだ　獰悪だから　花になってね　蜂が来るのを待っているよ　羽音がすれば目を閉じる　白いシーツが波打って　静かな部屋　静かな熱　手を振って別れた　私は踵を返した　多分泣く
幼な子のように　声をあげて泣いてしまう

　　　　　　　『戸惑いは森の中』
森の葉っぱがざわめいて　心はどこにも行けないの
とぼけた小人はさらわれた　落としてしまった胡桃のボタン　リスが自宅に持ってった　森の外の人たちは
2時間ドラマに夢中だろう　私は西へひとまず西へ
水たまりで途方に暮れて　鞄の白パンはもう硬くなってしまったよ

　　　　　　　　『旅の終わり』
自分が終わるとき　空は蒼蒼と澄み渡っていた　光は一瞬　エデンが泣いて　君がはじまる　旅の終わりはここと決めてた　

　　　　　　　　　『口笛』
この先は急な坂道で　自転車で下っていくとジェットコースターみたいなんだ　風がまだ冷たくって　頬が
紅くなってるよ　あの時の口笛のメロディはなんだっけ？　流行りの唄か洋楽か？　何度も頭が再生するよ
その度に画が翳む　でも音はまだ鮮明に

　　　　　　　『運び屋に告ぐ』
いつか私が滅びたら　灰は異国に埋めてほしい
知ってる場所で落ち着いて　知ってる範囲で暮らしてた　それでいいと思ってた　それが今はなぜだか　春風が妙に愛おしい　連れてってくれるんだね　消えそうなくらい愛おしい