『電話の主』
電話の主はステッキ持って　ゆらゆら歩く　電話線のむこう　緊急事態を報せなくっちゃ　だけども他人事
電話の主は　あいもかわらず　ゆらゆら歩く

　　　　　　　　　　『強風』
強風　翌る日　横たわる枯葉また枯葉　咳をした　神社の境内　私はまだ散歩の途中

　　　　　　　　　『合図』
2人の時間が　なだらかなさか道を上っていく　森はどこだ？　すぐそこだ　逃げた魚も上っていく　だれかが仕掛けた　せーのの合図で

　　　　　　　　『アボカド』
初詣　世界平和を願ったら　隣りの友人に笑われた
アボカドを愛でる　透明なグラスで　なんでもない水
透き通って明朝　一日のはじまりが気怠さと安寧の隙間を泳いでる

　　　　　　　『シュトーレン』
明日は晴れ　今日は雨　今の気分はコバルトブルー
日々を取り分けて　私たちは暮らしている　戸棚にあるはずの紅茶がなくて　少し寂しくなっても暮らしは続く　誰かが叫んでいる　悲鳴にも聴こえる　ただ私たちの関心は目の前に取り分けられた焼き菓子だった