『瞼2』
瞼の上に白い鳩　溜まった涙は膿となる　キッチンでお皿を洗う　油汚れは尽きない悩みだ　目を閉じる時間は鳩が決める　私は映画を観てたいけれど　鳩がそれを許さない　目を閉じる　その先は闇　いつか必ず明ける闇

　　　　　　　　　『遠雷』
遠くで雷の音がする　本当に微かに　きっとこっちには来ないだろうと油断して傘を持たずに外へ行く
雷は来てしまった　雨と仲睦まじく　私は濡れた
路上で濡れた　雨に唄う気にもなれずに　帰路を行く

　　　　　　『インターミッション』
回想はバスルームにもやってきて　泡に思い出が投影される　どんなカットもセピアにすれば格好がつくかな　物語は続くのに散乱する部屋　途中休憩の看板が出ているうちに　私は記憶を整理する

　　　　　　　『銅貨が燃える』
神様に捧げるはずだった　銅貨が水面に浮かんでいる
科学的根拠を飛び越えて　銅貨はそのまま燃えさかる
それはなんだか美しくって　食い入るように見入ってしまう　

　　　　　『クロックムッシュの満月』
まあるい月に何をみる？　しあわせのかたち　あらゆる舞台の悲劇のヒロイン　お婆ちゃん家で見た木のおぼん　騒ぎすぎた仔猫たち　昨日無くしたグレイの帽子　夜がふける　朝が来たらクロックムッシュ食べよう