『本気の恋の季節』
枯れたつもりが本気の恋がいままさに光になる 言葉も心も飛び越えて 棒高跳びの新記録 春には春の冬には冬の恋の装い あなたに会いに行く時は恥も忘れて爆走してた 景色も財布も置いてきた 胸の高鳴りはついてきた はじまったまたはじまった 恋の季節がはじまった
『去年のカレンダー』
下向いて歩いてた とぼとぼと自分なんてもういいやって空気の抜けたボールを投げている 去年のカレンダーに笑われた 押入れの中、11月の部分がめくれてる役目を終えたカレンダー 私の胸がきゅうって鳴って去年のカレンダーにハイタッチする スニーカーの紐を結び直して歩いてみる 去年の私何してた?ひとまずそこに追いつこう
『群像劇』
来た道に置いてきたのは ポケットの中のパン屑だけじゃないはずだ 忘れたことを忘れた頭に虚飾に満ちた驢馬の耳 私はとある舞台のキャストだけれど その舞台には間に合いそうに無い 私の参加しない群像劇は砂埃にまみれて 馬車馬の嘶きとともに何処か彼方に消えてしまった
『オンリーワン』
デパートの地下 3割引きのメンチカツが目に入る
卑しく私は鷹の目でそれを狙う ハイエナが何頭かやはりそれを嗅ぎ回っている あくまで笑顔の店員がその状況を俯瞰している 獲物を取り損ねた駄目な鷹
私はデパートの一階でポールスミスの柄シャツを見つめていた 物欲はキリが無い せめて無欲になれればと他愛の無いポップソングを口ずさむ
『胸の報せ』
空気を入れ換える 重たい部屋の雰囲気が外にふんわり逃げてった 外の世界では部屋の問題は些細なもので シャボンのように消えてった 一瞬気分が楽になる 心地よい呼吸ができた あの重たさは何だろう
人の不安の集まりか はたまた地球のため息か