天坂えみる

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7/16/2023, 1:14:28 PM

         『夏の扉』
西の空 夏の扉は浮かんで消える 食べ残しの鰯雲 骨組みだけが露わになった フェアリーたちはそんな空に『戦争反対』のプラカードを掲げて宙に舞う 何処にも行けないさびしんぼうが私以外に2〜3人いる 特段、魅力のない川で頭を掻いて 空を見ている

7/15/2023, 6:46:31 PM

       『迷子のタクシー』
名前をもらったばかりの駅 カシオペイアが期限切れのポスターを剥がしてまわる 思い出は選別される 月一回業者が回収に来てまわる 忘れたい思い出を出しそびれる ため息をつく それを聞きつけタクシーが呼んでもないのにやってくる 急いていたのか 狭い駅前ロータリー タクシーの後輪が縁石を乗り上げて 鈍い音が鳴るのを聴いた

7/14/2023, 1:54:29 PM

          『再会』
ふれあうことをためらって 月の背中を覗こうとした
ほんの冒険のつもりだったんだ エルマーみたいにするつもりだった 時計は何回24時間を数えたか 気が遠くなって麦茶飲む 再会の日はやってきた 訪問販売かと思った 久方ぶりのパスタのソースは控えめなトマト色 この感じなんだか余計に照れ臭い 

7/13/2023, 11:43:06 PM

          『魚群』
魚群がジェットコースターに乗っている 魚である優越感 魚である劣等感 上昇する 下降する 鮫に狙われるあのスリル 数知れない泡のシャワー気絶しちゃうよ 飛び込む先は漁師網 私は明日の焼き魚

7/12/2023, 11:47:24 PM

        『人間から毒蛇』
藪の中 お気に入りの場所に住んでいる 多くの人間たちに恐れられ ごく少しの人間が愛してくれる
わたしの毒は優しさなんだ 伝わりにくいかもしれないけれど 温かいんだ 湿地帯 ぬるい風 もうすぐ大雨が降るだろう

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