『起きぬけのブルー』
永く降り注ぐ雨を見ている 憂鬱を超えたその先は
幼年期に見たガソリンスタンドの洗車機の中だった
あの大きな回転ブラシがイソギンチャクに見えてしかたない 洗車の終わりと雨の終わりはどこか似ている
寝起きのせいか余計にそう思えた
『ストレイシープ』
もやもやと私は連れ立って歩いてる どこか私に似たもやもやはふわふわとはまた違う感触だ ちょこんっと私の後をついてきて 尊さすら覚えるときもある
迷路の入り口はすぐそこなのに このままでもいいかなってあなたを撫でる だけど違うそれはきっと違うんだ 雲の切れ間から覗く光が二人でおいでと私を誘う
『紅玉を描く』
赤ペンを買いに行く コンビニでいい 赤ペンで丸を描く 無意識のうちに林檎 罪の味滴る真っ赤な林檎を描く はらぺこ青虫に喰べられないように格子を描くこれも真っ赤に描く 急な腹痛 静養を余儀無くする 寝ながら怪奇譚を読む 赤のイメージ 頭は林檎
寝ても覚めても
『昨日の庭に明日の雨が降る』
暫くぶりの雨は草木の喉を潤した 渇きの中で考える
草木は水の事だけを 何にもない日は世情を観察しながら(晴れた日は光合成しながら)文句ばかり言っているのに そんな余裕もなくなった 明日からは慎ましく生きようと考えてもみたけれど 余裕ができたら
文句ばかりが浮かんでくる 雨への感謝はきまって昨日の庭に置いてきてしまうのだ
『純水』
雨を浄化するスポンジが 都会に純水を流し込む
交差点ですれ違った人達 満ちてる人はどれだけいるの? オレンジジュースでは無い ましてや炭酸水はほど遠く 紅茶というにも訝しい 純水は煌めきを増し 人々のもとに降り注ぐ 水の違いに気づいた誰かがまた、新たな物語を紡ぐだろう