ゴトンゴトンと、電車に揺られる。そして着くのは同じ場所。毎日毎日これだと飽きてきそうだ。
だからわたしは、飽きないようにすることにした。
あ、今日はいつもよりちょっと電車来るの早いな。
あ、今日は高校生が多い気がする。
あ、今日は、今日は。
前日との差異を見つけることが楽しいことに気づく。そうか。電車の中以外でもこれをすると、なんだか一日が長く感じる。子どもの頃みたいに。
童心に戻れた気がして、わたしは楽しい。
#日常
日の入りの空が好きだ。特に、夕の赤と夜の青が混ざった紫色を見ること。わたしの心が荒んでいるのを、すうっと浄化してくれているように感じる。
一日の終わりというのに神秘的な空の色は、わたしの顔に映り、わたしを神秘的にさせる。わたしの周りもを神秘的にさせる。そして、神秘的になったものに囲まれたわたしは、とても美しい気分になるのだ。
#好きな色
突然の夕立。「やっべえ傘忘れた」なんて言って、わたしの折りたたみ傘に入ってきた彼は、普段わたしのことなど眼中にないはずだった。彼の世界にはいないはずだった。
だけれど、彼の世界にわたしは入れた。今まで抱いてきた想いがはち切れそうで、なんだかおかしくなってしまいそうだ。
「なんか顔赤いよ、大丈夫?」
鈍感すぎる彼。息もできないほどに、心が膨らんでいく。心拍数が上がっていく。どう返事しようか、それだけで1秒に何回も心臓が飛び上がる。
「全然大丈夫! だって、」
だって……あなたのことが好きだから。
#相合傘
苦しい。それだけの理由だった。わたしは、怠惰になった。
突然何もできなくなって、生きることが辛くなって。挙句の果てに、何度も人間をやめようとした。
病名をつけてもらえたら、どんなに楽だったろうか。言い訳ができたら、理解されたら、仲間ができたら。わたしの願いなんて、叶うはずがなかった。
ひとでなし。そんな言葉が一番似合うわたし。自分がひとでなしだと思うと、他のひとでなしの人に申し訳なくなってしまうけど。
屋上。ようやく全てが終わる。わたしがわたしであることが、やっと。
地面から足を離した。不思議と恐怖は感じなかった。空気抵抗が涼しい。ただただそう思っただけだった。
#落下