『何でもないフリ』
大丈夫。大丈夫。
つい何でもないフリをしてしまう。
本当はそうじゃないのに。
本音はもう全て投げ出したくてたまらないのに。
こうあって欲しい自分が、地に足を着けず立っている。
こうあって欲しい自分? 世間じゃないの?
と思いつつクセは治らない。
ええ、大丈夫。大丈夫です。
『仲間』
また遊ぼうね。
また会おうね。
ネットの中で交わす会話。
アバターがにこやかに手を振る。
本名は誰も知らない。
水飲み場にたまたま来た種類の違う鳥のように、
さえずりあって立ち去るだけ。
軽い愚痴や寒さに文句を言うだけ。
笑い合うだけ。
けれど、確かに仲間なんだ。
また会えますように。
現実のあなたが、幸せにと言ったら大げさ過ぎるから、気分良く過ごせますように。
『手を繋いで』
最初に君と手を繋いだことを覚えている。
手汗がすごいんじゃないかと、そんなことばかり気にしていた。
手を繋ぐのが自然になった頃、手のあたたかさを感じるようになった。
冬には君の手をポケットに招くこともした。
手を繋ごう。
君の手をとりたいんだ。
またのんびり散歩でもしよう。
『ありがとう、ごめんね』
私の選択をあなたはきっと怒るでしょう。
でも、それがあなたの幸せになると私は信じています。
私のこの想いをあなたは知らなくていい。
遠い未来に思い出してくれたらいい。
ありがとう、ごめんね。
こびりついた執着が届くがどうかわからないけど、手紙を隠しておくね。
あなたが読みますように。
読みませんように。
『部屋の片隅で』
部屋の片隅で待っているよ。いつまでも。いつまででも。
埃をかぶっても、忘れさられたとしても。
いつか思い出してくれると信じているから。
手にとってくれることを信じているから。
他のやつにあなたをとられていても、嫉妬なんてしないわ。
あなたが私を見たとき、
あなたの心を奪えると確信しているから。
だからね。
ずっと、ずっと待っているよ。
積読の本より